【前回】北海道新幹線札幌延伸でどうなる? 函館本線・山線の旅(4)
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2030年度の開業を目指して北海道新幹線札幌延伸のための工事が進められています。開業と共に並行在来線はJR北海道の経営から分離されるため、沿線市町村は鉄道のあり方を協議しています。特に小樽~長万部は乗客が少なく、廃止か存続か揺れ動いています。10年後の札幌開業を控えた沿線の現状を全7回にわたって紹介します。(撮影は全て2020年8月)

現役の駅に宿泊できる 「比羅夫駅」

駅舎は「駅の宿ひらふ」として活用されている

ニセコエリアは2000年ごろから外国人観光客が増加し、今では日本とは思えないほど国際的な街に発展しています。各スキー場周辺では建設ラッシュが続き、目まぐるしく開発が行われています。街が変貌していく中、比羅夫駅は昔ながらの佇まいを見せています。開業は1904年10月15日。地名は飛鳥時代に蝦夷征伐を行い、駅付近の後方羊蹄に政庁をおいたとされる阿倍比羅夫の名に由来しています。

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1982年3月1日に無人駅になりましたが、1987年頃にJR北海道から駅舎を借り受けて民宿を開業。「泊まれる駅」として話題を集めました。前のオーナーから宿を譲り受け、1995年から京都出身の南谷吉俊さんが民宿を切り盛りしています。

くつろげる雰囲気の談話室

事務室はリフォームされて宿に。木のぬくもりを感じる談話室や客室から列車の発着が見えます。壁にはサイドボードや愛称標などが飾られ、北海道の鉄道に関する書籍も数日間滞在してゆっくり読みたいほど多数置かれています。

客室から発着する列車が見える

客室は駅舎2階の山小屋風ベッドルーム深緑(ヴェール/定員4名)と、洋室流星(ステラ/定員3名)のほか、ログコテージ・すーる(定員5名・トイレ付)の3タイプ。相部屋・二段ベッド・セルフサービス・11時消灯など、基本的なシステムはゲストハウス方式。テレビは設置しておらず、ゆったりとした時間が楽しめます。

丸太を掘り抜いた露天風呂

民宿自慢の露天風呂は、世界最大の猛禽類シマフクロウが巣作りできそうな大木を堀り抜いて湯船に。絶妙な角度で寝そべることができるので、そのまま眠ってしまいそう。鳥のさえずりや草花が放つ爽やかな香りに包まれて至福の時を過ごしました。

青空を見上げて入浴

青い空に流れる雲を眺めながらお湯に浸かる幸福感。普段は明るい時間にお風呂に入ることも、空を見上げることもありません。例えようがない心地よさに喜びがこみ上げてきました。

ホームでバーベキューを楽しむ

食事はホームでいただきます。夕食はバーベキューで、本日はジンギスカン・ホタテ・シシャモ・ウインナー・エビ・タマネギ・トウモロコシ・ピーマン・なすびなどに、ソフトボール程の大きさのおにぎりが二個と、デザートにスイカが付く豪華さ。列車の乗客は通学などの「常連」のため、驚く様子はありません。列車が過ぎ去った後は、ホームの灯とバーベキューの炭火だけが闇を照らしていました。

文/写真:吉田匡和

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