渋谷スクランブルスクエア15階のホールから直下のJR山手線を望む。両脇のビル群の真ん中を空港特急「成田エクスプレス(N’EX)」が新宿に向かいます(筆者撮影)

いよいよフィナーレを迎えます。東急グループの渋谷駅周辺開発。「『100年に一度』のシブヤ大改造」(東急グループのパンフレットから)が、最終段階に入ります。

東急は2025年6月3日、渋谷スクランブルスクエアで「渋谷まちづくり最新情報発表会」を開催しました。今後の開発スケジュールとともに、「時代の半歩先を行きながら渋谷の新しい風景をつくる」(坂井洋一郎執行役員・都市開発本部渋谷開発事業部長)企業姿勢を明示しました。

会場には渋谷まちづくりの大型立体模型を展示。中央ラインがJR山手線。正面の3棟は渋谷スクランブルスクエア東棟、中央棟、西棟です=写真左から=(筆者撮影)

渋谷のまちは、鉄道の発達と二人三脚で発展してきました。本コラムは、鉄道ファン⽬線での「渋⾕と東急」を柱に、会場撮影した駅の歩みをたどる画像を交えながら渋⾕の過去・現在・未来を展望します。

【参考】渋谷駅が再開発で変わる!ハチ公前はどうなる? 東西南北をつなぐ歩行者道や駅前広場も整備! 全体完成は当初予定から7年先送りに
https://tetsudo-ch.com/13001143.html

戦前のうちに基幹ターミナルに

歴史の扉を開けましょう。渋谷駅は明治時代半ばの1885年に開業しました。山手線の西半分ほどの区間(品川~新宿~赤羽)が私鉄の日本鉄道の手で開業したことはご存じの方も多いと思います。渋谷の始まりは日本鉄道品川線の駅でした。

1907年に玉川電気鉄道(路面電車。現在、地下化された東急田園都市線の前身)、1911年に東京市電、1927年に東京横浜電気鉄道(現東急東横線)、1933年に帝都電鉄(現京王電鉄井の頭線)、1938年に東京高速鉄道(現東京メトロ銀座線)が開業しました。

東急・渋谷三景その1。開業時の東急渋谷駅、ホームは1面2線で簡素な屋根があるだけ。駅の看板は「東京横浜電車」で、車両は単行(1両編成)です
東急・渋谷三景その2。戦前の1934年に駅ビル「東横百貨店」が開業。今につながる鉄道+流通の一貫体制が整いました

戦前のうちに渋谷は、東京郊外に向かう鉄道ターミナルの陣容を整えました。東横線は、大田区田園調布を筆頭に鉄道会社が沿線開発して利用客を増やすビジネスモデルを確立。基本は渋谷再開発にも共通します。

東横線地下化で再開発が始動

東急・渋谷三景その3。前回東京オリンピック開催の1964年に駅を拡張。3面4線で連続アーチ状の屋根は通称「かまぼこ屋根」。右上の車両は今もファンが多い青ガエルこと5000系電車(初代)

東急では、1977年に新玉川線(現田園都市線)渋谷~二子玉川が開業、1979年に地下鉄半蔵門線との相互直通運転を始めました。東横線は2013年に地下化、東京メトロ副都心線との相直も始まりました。東急両線から東京都心部へのネットワークが広がりました。

東急にとって大きな意味を持つのが、2002年の東横線地下化決定。線路上空に開発可能性が生まれ、再開発の引き金になりました。

全体完成は9年後

渋谷再開発では、2012年以降、「渋谷ヒカリエ」(2012年)、「渋谷キャスト」(2017年)、「渋谷ストリーム」、「渋谷ブリッジ」(いずれも2018年)、「渋谷ソラスタ」、「渋谷フクラス」、「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」(いずれも2019年)、「渋谷サクラステージ」(2023年)、「渋谷アクシュ」(2024年)と、東急系の高層ビルや複合施設が相次いで開業しました。

今後は、「渋谷アッパーウエストプロジェクト」(2029年度竣工予定)、「渋谷スクランブルスクエア(中央棟、西棟)」(2031年度竣工予定)などが控えます。

東急などの説明では、移設を繰り返してきた通路、改札、階段などの主な駅設備がおおむね完成するのは2030年度。銀座線渋谷駅ホーム直上の「東口スカイウェイ(仮称)」や、渋谷スクランブルスクエア西棟に隣接する「西口上空施設(仮称)」が一部完成、駅を中心とする東西歩行者ネットワークも誕生します。西口上空施設のデザインは、鉄道分野でも名前が知られるようになった内藤廣建築設計事務所が担当します。

その後、待ち合わせスポット「ハチ公広場」に代表されるエリアが2034年度までに完成。東急などは2030~2034年度を「まちびらき最終章」と位置付けます。

宮益坂方面から。銀座線ホーム上の空中回廊・スカイウェイ。左側(南側)に渋谷スクランブルスクエア3棟が並びます=イメージ=(画像:東急)

駅機能、可能なものは順次改良

現在の渋谷駅、再開発の真っ最中ということで致し方ない面もありますが、乗り換えの際などに分かりにくさがあるのも事実。今回の説明会でも、駅改良についての質問が出されました。

駅機能の完成は5年後の2030年度ですが、現状の不便さは東急も十分に認識するところ。説明会でも、「可能なものは順次改良していく」の発言がありました。

災害時の一時避難・待機広場も

東急、JR東日本、東京メトロの鉄道3社共同で2031年度に竣工する、スクランブルスクエア(中央棟、西棟)を先読みしましょう。

中央棟は地上10階、地下2階(高さ約61メートル)、西棟は地上13階、地下4階(同約76メートル)。両棟は2025年5月19日に起工式が開かれました。

館内には商業施設のほか、中央棟10階屋上には、各国大使館などと連携して国際レベルの文化交流を体験できる「パビリオン(仮称)」がお目見えします。

2034年度に誕生する「ハチ公広場」、「東口地上広場」「中央棟広場(JR線路上空・仮称)」など、合わせて約2万平方メートルの広場は災害時の一時避難・待機場所としても活用されます。

渋谷ストリームで内藤廣さんの作品展

〝渋谷文化プロジェクト〟をうたう「建築家・内藤廣」のキービジュアル(画像:建築家・内藤廣in渋谷実行委員会)

ラストは関連情報。先述の西口上空施設のほか、渋谷再開発でメトロ銀座線渋谷駅のデザインを手がけた、建築家・内藤廣さんの作品展が渋谷ストリームで開かれます。タイトルは「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘in渋谷」。

内藤さんは1950年神奈川県横浜市出身。東京大学副学長をへて、現在は多摩美術大学学長を務めます。鉄道では、メトロ銀座駅のほか、馬車道駅(みなとみらい線)、高知駅が代表作。ユニークなタイトルは、内藤さんの頭に宿る赤鬼と青鬼がバトルを繰り広げながら作品解説する趣向(?)を表現するそうで、乞うご期待。

開催は2025年7月25日~8月27日。主催は実行委員会方式で、鉄道業界からは東急電鉄、東京メトロ、JR東日本が協賛します。チケットはローソンチケットなどで。

(施設名は一部略称表記。東急ヒストリー写真は説明会場で許可を得て撮影しました)

記事:上里夏生

【関連リンク】