土合駅改札内の扉から外へ出ると、白いインスタントハウスの並ぶ「DOAI VILLAGE」が広がる

2020年11月11日(水)、群馬県の上越線土合駅で無人駅グランピング施設「DOAI VILLAGE」のグランドオープン報道公開が行われました。

土合駅は「日本一のモグラ駅」と呼ばれる無人駅。駅舎と上りホームは地上にあるものの、下りホーム(新潟方面行き)は上越線の新清水トンネル(1万3500m)内にあり、地上まで462段(駅舎まで486段)という大階段が存在します。

土合駅外観
駅舎内には登山客に注意を促す看板が
下りホームへ向かう大階段
下りホームに設置された看板 地上まで約10分要する
下りホーム待合室 小屋の中でクラフトビールの熟成も行う

「DOAI VILLAGE」はそんな土合駅の施設を活用したグランピング施設です。駅としての機能はそのままに、JR東日本高崎支社の用地内にテント型の宿泊施設「インスタントハウス」や野外サウナを設置し、使われなくなった役務室をカフェ「mogura」としてリニューアル。自然の中で非日常を大いに楽しめる空間として生まれ変わりました。

ゲスト専用のセンターハウスには簡易キッチン、シャワールーム、リビングなど
下りホームに眠っていたという駅標
安全祈願の鐘
多角形の広場から各インスタントハウスへの路が伸びる
かまくらめいたインスタントハウスは外がマイナス10度でもオイルヒーター1つで20度を保つ
シャワールーム内装
野外サウナ 温度差でレンズが曇る
駅務室を改装したカフェ「mogura」
メニュー表
そのままの内装が鉄道ファンの目を引きそう(おにぎりは取材対応用、レギュラーメニューではない)
椅子に積まれているのは駅売店にあった1985年の雑誌

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本年2月~3月にかけてトライアルでは満員になるほどの盛況を見せ、「(当時は)専用のトイレもシャワーもない状態で、駅の中の施設を流用しながらだったにもかかわらず、非常に満足度が高く『ぜひ続けてくれ』という声をいただいていました」(VILLAGE INC.代表取締役社長 橋村和徳さん)と無人駅の活用に高いニーズがあることを確認できたことから、JR東日本スタートアップとVILLAGE INC.が本格的な事業化に向けて資本業務提携。インスタントハウスも2棟から4棟に増やし、シャワー、トイレ、サウナ、簡易キッチンを備え、11月14日(土)にグランドオープンを迎えます。

左からJR東日本高崎支社長 木村法雄さん、VILLAGE INC. 代表取締役社長 橋村和徳さん、JR東日本スタートアップ代表取締役社長 柴田裕さん

ゲストルームは4棟、定員は1棟につき2名まで。宿泊料金は大人一名25,000円(税別)、1泊2食+ドリンク付き(一部の飲料は除く)のオールインクルーシブで提供します。予約はWEBサイトで受け付けていますが、12月の予約はほぼ埋まっており、平日にわずかに空きがある程度の盛況ぶりだそうです。

「無人駅は宝の山」と語る橋村さん

無人駅というと廃れた町の象徴といったイメージがあるかもしれませんが、実は一次交通が通っており、インフラが整っている「開発しやすい遊休資産」でもあります。そのまま維持管理するとコストがかかりますが、開発することで利益を生む資産に変え、ひいては地方創生にもつなげていくのが本事業の面白いところ。橋村さんらは、「DOAI VILLAGE」のみならず、今後も知名度問わずさまざまな無人駅の開発を進めていきたい意向を示しました。

文/写真:一橋正浩