首都圏の鉄道線区で今、要注目なのがJR京葉線です。地下の東京駅を発車して、潮見駅手前から地上に出て、進行方向右側に葛西臨海公園の大観覧車や東京ディズニーリゾート(TDR)、ZOZOマリンスタジアム、左側に新興住宅地を見ながら、JR内房、外房の両線が分岐する蘇我駅に至る43.0km(西船橋への分岐線含まず)の路線です。

線区を管轄するのは東京都内区間を含めJR東日本千葉支社。2015年度に始動した「京葉ベイサイドラインプロジェクト」で、沿線の価値向上や魅力づくりに力を入れます。最近も、全社レベルの「沿線くらしづくり構想」の対象線区に選定。2021年6月ごろから、専用列車で人生の門出を飾る「ウエディングトレイン」も運行されます。2020年3月に全線開業30周年を迎えた京葉線の小史とともに、最近の話題を集めました。

最初は〝貨物線〟だった

全線開業時の京葉線路線略図。「京葉湾岸線」の表記もあります。画像は1990年ごろのJR東日本の資料から

京葉線の歴史は半世紀以上前、1961年の計画決定にさかのぼります。目的は京浜、京葉の2つの工業地帯をつなぐ貨物鉄道ルート整備、そして東京都心線区の客貨分離。運転上の起点は川崎市の塩浜操車場で、東京都大田区の東京貨物ターミナル駅を経由して新木場から京葉線に入り、蘇我を経て京葉臨海鉄道に乗り入れ京葉工業地帯に至る構想でした。

ADVERTISEMENT

ところが高度経済成長期の東京人口集中で総武線にバイパス線の必要性が生じ、東京都と千葉県は当時の国鉄と、建設に当たっていた日本鉄道建設公団(鉄道建設・運輸施設整備支援機構の前身)に京葉線の旅客線化を要請。国鉄は1978年に旅客線化の方針を固めて国の認可を受け、国鉄改革前年の1986年3月に西船橋―千葉港(通常は「千葉みなと」と表記)間で旅客営業を開始しました。

地下の京葉線東京駅は新幹線駅のはずだった

京葉線東京駅は2面4線の構造で、府中本町行き武蔵野線と京葉線の電車が並びます。実現可能性は低そうですが、東京駅から新宿や中央線方面に延伸される構想もあります。

既開業区間を含む新木場―蘇我間開業はJR発足翌年の1988年12月、東京―新木場間は1990年3月で、計画決定から29年の歳月が流れていました。ちなみに昔の東京都庁、現在の東京国際フォーラム北側地下の京葉線東京駅は当初、成田新幹線の始発駅として建設されていましたが、この辺を書いていると話が終わらないのでまたの機会に。

その後、京葉線を貨物列車が走るようになったのは2000年12月から。元々貨物線として計画されていたので、重量の重い貨物列車の走行に問題はありませんでした。

ベイサイドラインプロジェクト始動

京葉線新木場駅は駅改良が2020年7月に竣工。壁面や柱に木材を配し、木の香りとぬくもりを感じられる駅空間になりました。

話は一気に飛んで2015年。JR東日本千葉支社は同年4月から、京葉線の沿線価値向上・魅力づくりを目標とする「京葉ベイサイドラインプロジェクト」を始動させました。全社で志向する「沿線ブランド確立」の一環で、統一感ある沿線イメージ形成や利便性・快適性の追求、地域との連携などを進めて、「選ばれ続ける京葉線」を実現します。

うたい文句は、「進化する毎日。京葉線」。京葉線は、全線開業が平成に入ってからとJR東日本の首都圏線区で歴史が浅く、沿線にテーマパークや大型展示施設が点在するなど大きな発展可能性を持ちます。

具体的には、①利用客や地域に笑顔を届ける ②京葉線沿線としての統一感を打ち出す ③鉄道駅を核に利便性や快適性を向上させる ④各駅周辺の特性を生かして地域との連携を進める――の4項目を打ち出しました。JR千葉支社は駅勢圏はもちろん、それ以外からも一目置かれる京葉線を創造しようと努力を重ねました。

2023年春ごろに新駅開業

コロナの2020年も、JR京葉線の話題は途切れませんでした。5月には新習志野―海浜幕張間(3.4km)に計画中の新駅について、「2023年春ごろ開業」のスケジュールが正式発表されました。

前段の2018年4月、JR東日本と千葉県、千葉市、イオンモールの4者で構成する「幕張新都心拡大地区新駅設置協議会」が立ち上げられ、新駅の開業スケジュールなどを検討してきました。幕張新駅(仮称)は新習志野、海浜幕張から各1.7kmのちょうど真ん中。東京方面の上り線が高架、蘇我方面の下り線が地平の二層構造なのは、本線北側に車両基地の京葉車両センターがあって、スムーズに入出庫できるようにするためです。

新駅南側の大型商業施設「イオンモール幕張新都心」来店時は、海浜幕張駅などからのバス移動が必要です。駅が開業すれば京葉線からショッピングセンターに直行でき、買い物の足はぐんと便利になります。

駅本屋は鉄骨造り平屋建て、ホームは2面2線で10両編成電車に対応します。当初、建設費は約180億円とされましたが、概略設計段階で削減。建設段階で、もう一段のコストカットに努めます。建設費は地元企業代表のイオンモールが半分、残りを県、市、JRが各6分の1ずつ負担します。

「沿線くらしづくり構想」「ウエディングトレイン」

年末の2020年12月には、京葉線をめぐる2つの話題が発信されました。1つはJR東日本の全社プロジェクト「沿線くらしづくり構想」で、京葉線が中央線とともに実施線区になることが決定。2つ目はJR千葉支社レベルの取り組みで、葛西臨海公園で結婚セレモニーを企画する「Denim~デニム~」(ウエディングプランのブランド名)との協業で、2021年6月ごろから京葉線の「ウエディングトレイン」運転が決まりました。

スタート6年目に入った「京葉ベイサイドラインプロジェクト」では、2020年に「わくわく ぞくぞく 京葉線」の新しいキャッチフレーズを決定。沿線くらしづくりとウエディングトレインは、〝わくわく ぞくぞく〝の栄えあるトップバッターを務めます。

沿線くらしづくりは、沿線人口増加と生活圏拡大を目指してJR東日本とグループ・パートナー企業が、くらしを豊かにする多様なサービスを提供。ZOZOマリンや幕張メッセのある海浜幕張エリアでは、麺をゆでるロボットなどを活用した飲食店舗を開業します。さらに、新しいモビリティ(移動)の実践策として、シェアサイクルなどの拠点整備に取り組みます。

ウエディングトレインはE233系4両または6両編成の団体専用臨時列車で、最前部に新郎新婦が考案したオリジナルヘッドマークを掲出。車内にはレッドカーペットを敷き、中吊り広告枠に写真などで構成した2人の生い立ちを掲出して門出を祝います。

幕張新駅は撮り鉄の聖地に!?

海浜幕張駅に入線する特急列車。JR千葉支社はZOZOマリンスタジアムや幕張メッセ来場客に特急利用を呼び掛けます。
蘇我駅では京葉臨海鉄道からのタンク貨車が出発を待ちます。

最後に京葉線の車両と撮影スポットをご案内。西船橋から乗り入れる武蔵野線を含め、これまで103系、201系、205系などさまざまな電車が走った京葉線ですが現在、京葉線はE233系、武蔵野線はE231系にほぼ統一されているようです。房総特急の「わかしお」と「さざなみ」は、255系やE257系特急電車を使用。ほかに貨物列車も運転されるので、運が良ければ見られるかもしれません。

京葉線は、先述の幕張新駅と蘇我駅付近を除き全線高架または地下なので、ホーム以外からの撮影は厳しいよう。線路配置を見ていないので何ともいえませんが、新駅からは京葉車両センターに入出庫する車両が見られるかもです。

文/写真:上里夏生