お試し期間中の中央線グリーン車に乗ってみた【コラム】
2025年春、いよいよ中央線快速・青梅線でグリーン車サービスが始まります。
10両編成の快速電車に連結される2階建てのグリーン車は全席に電源コンセントやテーブルが付いた回転式のリクライニングシートを備えており、その定員は2両合わせて180人。車内空間の快適さもさることながら、増結による純粋な定員増が中央線の混雑緩和につながることも期待されています。
グリーン車を連結した車両は2024年10月13日から運行を開始しており、JR東日本は2025年春まで「お試し期間」としてグリーン料金なしで中央線グリーン車に乗れる施策を実施しています。筆者も中央線沿線を取材した際に狙って乗車、その素敵な乗り心地を体験してきました。
今は平日昼間が狙い目
グリーン車を連結した編成は、乗車日の2024年10月17日時点では3編成のみ。来春のサービス開始に向けてグリーン車を順次連結しているため、いずれは珍しくもなくなるはずですが、現時点では偶然を期待して出会えるものではありません。
そこで、JR東日本アプリなどを利用してグリーン車を連結した12両編成を探します。その人気ぶりから沿線の利用者だけでなく鉄道ファンも詰めかけていることは様々なニュースで報じられているため、混雑時間帯は避けた方が無難だろうと判断し、12時5分東京発の列車に乗車してみることにしました。
東京駅のホームには列が出来ており、鉄道ファンと思しき装備の方々もちらほら……発車標の写真を撮りながら待っていると、いよいよ12両編成の列車がホームへ入線してきます。一般の利用者と思しき方もスマートフォンを構え、真新しいピカピカの車体を撮影していました。
両開きのドア、居心地の良い座席
昼の時間帯とはいえ、乗降は至ってスムーズなものでした。JR東日本の在来線グリーン車といえば、そのドアは全て片開き。ですが、中央線グリーン車は乗降しやすいよう「両開き」のドアを採用しています。
今回は目的地が三鷹までということで、まずは1階の座席をチョイス。景色優先なら2階席が良いのでしょうが、個人的には揺れも少なく、目線の高さが駅のホームと同程度になる1階席がお気に入りです。余談ですが、東京駅には起点を表す「ゼロキロポスト」が設置されており、これを車内から見ることもできました。
着席前にまずは座席を回転させて逆向きに。中央線グリーン車は自動座席回転装置を備えているため、本来であれば乗客が操作する必要はありません。ただし今は「お試し期間中」なので「普通車扱いのため折返し駅での座席回転は行っておりません」(JR東日本八王子支社広報)とのこと。乗客みんなで協力しながら足元のペダルを踏んで回転させました。
このほかにも車内のフリーWi-Fiなど一部の設備は使用できません。ヘッドカバーについては「(サービス開始時には、全ての編成で備え付けられている状況にするため)サービス開始より少し前から順次設置をしていく予定です」(同)とのことで、今はまだ付いていません。お試し期間中ならではの光景です。
座席の乗り心地は良く、揺れはほとんどなし。席はほぼ全て埋まっており、降車時はデッキに立ち客も数名いました。お友達と一緒に乗られた方なんかも大勢いらっしゃったとは思いますが、会話もほとんど聞こえず、純粋に車窓や乗り心地を堪能されているような印象を受けました。三鷹までは30分もかからず到着しましたが、この乗り心地の良さなら2時間乗っても苦になりません。
特急との住み分けは?
ここで気になるのが特急列車との住み分け。中央線グリーン車のグリーン料金は、紙のきっぷで支払うと50キロまで1,010円、100キロまで1,260円。Suicaグリーン料金なら同じ区間で750円/1,000円。(JRE POINT用)Suicaグリーン券なら距離を問わず600ポイントです。
東京~八王子が47.4km、東京~青梅間が56km、東京~大月が87.8km。青梅に行くなら新宿から乗って50km以内におさめるとちょっとおトクだなといった距離感です。なお、101キロ以上の区間の料金も設定されてはいますが、中央線快速・青梅線内に101キロ以上となる区間はありません。
通学・通勤で使うにはちょっと高く、着席保証もないのが惜しいところですが、朝の中央線の混雑ぶりを考えるとこのくらい払っても快適に移動したいという需要は見込めるでしょう。特に長距離となればコンセント付きの座席が威力を発揮します。確実に着席したいのであれば特急列車を活用すればよいのですが、運行本数に差があるため気軽に飛び乗るのは難しく、グリーン車の方が需要に応じやすい面もあるでしょう。
余談ですが、実際に乗車してみて感じたのが「この乗り心地の良さ、無料期間中に試して虜になっちゃう人もいそうだな」ということ。筆者は中央線ユーザーではないので憶測交じりであることをお許していただければ、無料期間中に魅了されたユーザーがグリーン車を選ぶことで普通車の混雑も緩和され、「グリーン車には乗らないけど自分にとってもメリットがあるので歓迎!」というユーザーも多そうです。
記事:一橋正浩
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