JR渋谷駅に「新南改札」誕生 線路を挟む東西2棟の高層ビルをつなぎ地域の回遊性高める(東京都渋谷区)【コラム】
駅改良プロジェクトが進むJR渋谷駅が、また一つ進化を遂げました。駅の一番恵比寿寄り(南側)に新しい駅舎が誕生。全面開業予定は2年後の2026年度ですが、新しい改札口「新南改札」が2024年7月21日に先行開業しています。新改札は、JRの線路を挟んだ2棟の高層ビルをつなぐ通路に面し、渋谷エリアの回遊性を向上させます。
2棟の高層ビルでは、山手線西側(外側)の「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」に7月25日、クリエーターの活動拠点などの文化・商業ゾーンが開業。「100年に一度の大規模再開発」が進行中の渋谷に、新しい魅力を付け加えます。
JR新改札やサクラステージの記者発表会/内覧会は7月18日に開催。新改札は、JR東日本首都圏本部が説明に当たりました。本コラム前半は明治の渋谷駅開業時にさかのぼる新南改札の歴史や機能を概観。後半はエリア再開発に当たる東急グループの発表会から、将来の渋谷を展望しましょう。
開業時の渋谷駅だった新南口
JR渋谷駅の歩みは、2024年6月の土木学会賞コラムで紹介させていただきました。ポイントを要約します。
初代渋谷駅は1885年、旧日本鉄道が現在地南側に開業、1920年、現在地に移転しました。この時、初代駅は貨物駅に。戦後まで続いた貨物扱いは1980年に終了。1996年に埼京線が新宿から恵比寿に延伸された際、埼京線ホームは貨物駅跡地に設けられました。
JR東日本は、埼京線ホーム上層に渋谷駅新南口を開設しましたが、新南口に上がれるのは埼京線ホームだけ。山手線ホームから新南口を利用するには、連絡通路経由で5分程度の移動が必要で、駅の利便性は必ずしも良好といえませんでした。
設計は土木学会賞の東京建設PMO
JR東日本はこうした状況を渋谷駅改良のテーマととらえ、再開発に連動する形で南側に新駅舎を建設することを決定。新駅舎は、新南口の北側(原宿寄り)約200メートル、2020年6月に着工しました。
設計はJR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(東京建設PMO)と、グループのJR東日本建築設計。東京建設PMOは、今年の土木学会賞で2件の技術賞を受賞しています。
新駅舎が建設地されるのは、渋谷駅下部を横切る国道246号線の南側。東側を渋谷ストリーム、西側を渋谷サクラステージという2棟の高層ビルに挟まれます。
駅舎はストリームとサクラステージをつなぐ通路に面し、駅や線路を挟んだ東西方向の連続性や回遊性を高めます。
線路上の駅舎は地上6階建てで、床面積約5300平方メートル。1階が駐車場とバックヤード施設など、2階が山手線・埼京線ホーム・線路、3階が今回開業した新南改札と店舗(改札内、改札外各2店舗。店舗は今後開業します)、4~6階がオフィス(運営はグループのJR東日本ビルディング)というフロア構成です。
新南改札は、自動改札7通路と有人改札1通路、多機能券売機3機、指定席券売機1機、精算機2機(改札内)のスペックです。
新南改札から山手線ホームに下りられる
従来の新南口は、埼京線ホームだけに下りられる構造でしたが、新南改札は山手線、埼京線双方のホームに下りられます。
3階コンコースと2階ホームは、山手線、埼京線ともエスカレーター2機とエレベーター1機、階段でつながります。このうち山手線エレベーターと階段は工事中のため、当面使用できません。
先述のように駅舎全体の完成は2026年度予定で、店舗やオフィスのオープンはもう少し先になりそう。最近のJR東日本の駅らしく機能的にデザインされ、改札を入った乗客は直感的に目的ホームに到着できます。
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