※2020年12月撮影

トップ画像は、JR西日本紀勢本線紀伊内原駅。古い木造駅舎と巨大なクスノキが魅力。

池口英司さんの『大人の鉄道趣味入門 人生の後半を楽しむための兵法書』(交通新聞社新書/2019)の第四章は、「鉄道×○○ 新しいコラボレーションを楽しむ・作る」。

タイトルだけでは少し分かり難いですが、鉄道×「新しい趣味の分野」と考えれば良いのですね。

最初が「鉄道×グルメ~”動くレストラン”の楽しみ~」。

国内の鉄道から食堂車が無くなってしまった一方で、最近は「編成全体が食堂車」という列車が登場して人気を集めています。正に「レストラン・トレイン」です。

2013年に運行を開始した肥薩おれんじ鉄道「おれんじ食堂」の成功で、いすみ鉄道、八戸線、常磐西線、予讃線、伊東線、伊豆急行、七尾線、IRいしかわ鉄道、西武鉄道などにも続々と「レストラン・トレイン」が登場しています。

※2014年5月撮影

また鉄道車両がレストランに使われているお店もあります。わたらせ渓谷鐵道の神戸(ごうど)駅ホームに元・東武鉄道デラックス・ロマンスカー車両を使ったレストランがあります。天竜浜名湖鉄道西気賀駅には改札口に隣接し窓からホームに発着する列車が見えるレストランがあると書かれています。前者は見たことあります。天竜浜名湖鉄道には乗っていますが西気賀駅のレストランは記憶にないなぁ。

次は「鉄道クルージング~憧れの豪華列車~」。

著者池口さんは、まず2013年デビューの「ななつ星 in 九州」を取り上げています。定員が少ないことで話題になった豪華列車です。食堂車も連結されています。豪華客船でクルーズするように鉄道車両でクルーズするというコンセプトです。さらに2017年のJR東日本「TRAIN SUITE 四季島」そしてJR西日本「TWILIGHT EXPRESS瑞風」が登場しています。

※2020年12月撮影

著者によれば豪華列車は、戦前に登場し東京~下関間の「特別急行 富士」を嚆矢としています。

内田百閒先生は、阿房列車の冒頭で戦前以来十数年ぶりに乗る「特急はと」の最後尾、一等展望車に陣取っておられます。これが戦前の豪華列車を偲ぶ縁(よすが)になります。

著者は”動くホテル”と呼ばれた「特急あさかぜ」やその後登場した「北斗星」「トワイライトエクスプレス」が「目的地に移動する手段」であったのに対して「クルージングトレイン」は出発した駅に戻って来る点が全く違うと指摘しています。そして「クルージングトレイン」こそが”大人世代”が楽しむ鉄道であると結論しておられます。

宝くじ当たらないかなぁ・・・。

※2020年12月撮影

次いで「鉄道×音楽~鉄道ファンの音楽家たち~」。この本を読むまで、小生はドヴォルザークが鉄道好きだったとは知りませんでした。交響曲『新世界より』の作曲家は、毎日二ユーヨークのグランド・セントラル駅に鉄道車両を見に行っていたのだそうです。

英国のロック・ヴォーカリストのロッド・スチュワートのサッカー好きは知っていましたが、鉄道模型コレクターとは知りませんでした。

元カシオペアの向谷実さんが鉄道マニアを通り越して鉄道運転シミュレーターの開発までしてしまったコトは有名ですね。カシオペアの初代ドラマーが小生の十代からの友人なので向谷氏がツアー中に駅に行ったり、移動の際に遠回りして鉄道に乗ったりしていたという話を聞いたことがありました。

※2020年12月撮影

その他に好きな音楽家に縁(ゆかり)のある土地を巡る鉄道旅なども著者はテーマに良いと書いておられます。ジョン・レノンが休暇を過ごしていた軽井沢の万平ホテルとか。

もしかするとこの章がメイン? まだまだ新しい鉄道趣味の開発が続きます。

(写真・文/住田至朗)