宇都宮の地域連携ICカード「トトラ」イメージ

JR東日本が「地域連携ICカード」を活用した、地方圏のバス事業者のサービス向上に取り組み、鉄道、バスを合わせた公共交通の利便性向上や利用促進に成果を挙げている。

2021年3月には、栃木県宇都宮エリアの関東自動車とジェイアールバス関東が〝宇都宮版Suica〟の「totra(トトラ)」、岩手県の岩手県交通が「Iwate Green Pass(岩手グリーンパス)」の発券やサービスを開始。群馬県バス事業協同組合との協議もまとまり、上信電鉄、群馬バス(以上高崎市)、群馬中央バス、日本中央バス、永井運輸(以上前橋市)、矢島タクシー(太田市)の6社で、2022年春から地域連携ICカードによるサービス開始が決まった。

地域連携ICカードはSuicaの地域バージョンで、Suicaとバス乗車券の2つの機能を備える2in1のカード。定期券やICカード乗車券機能に加え、各種割引や独自サービスをカードに付加できるのがメリットだ。バス事業者は地域版Suicaを採用することでIC乗車券導入の設備負担が軽減でき、JR東日本もSuicaによる鉄道の利用促進や電子マネーの利用が期待できるなど、JR、バスに利用客も含む3者にメリットがある。

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栃木県のトトラは、「総合的(total)に輸送(transportation)をつなぐカード」の意で命名。現在はバスだけだが、2023年3月開業を予定する芳賀・宇都宮ライトレールでも利用できる。

バス2社は、これまで現金か磁気カードしか使えず、乗降口が1カ所のため、混雑時には乗降客が交錯していたが、トトラ採用に合わせて乗車口に読み取り機、降車口に精算機を設置し、乗り降りがスムーズになった。

群馬県の地域連携ICカードは6社が一斉採用する初めてのケースで、地域住民のほか東京や大阪からの観光・ビジネス客の利便性向上も期待できる。対象バス事業者は、前橋、高崎、太田の各駅を中心に運行。導入路線は今後、第発表される。カードの名称は「nolbe(ノルべ)」に決定(「e」にアクセント記号)。群馬弁で「乗る」を意味する「のるべぇ」に由来する。

マスコットキャラクターが券面にプリントされた群馬県の「ノルベ」

JR東日本はこれまで、宇都宮をはじめとする栃木県内、岩手県、山形県、青森市、秋田市、八戸圏域で、地域のバス事業者などと連携。群馬への導入で合計8エリアに広がる。

文:上里夏生