不動産会社が運営する鉄道、国内AGT(Automated Guideway Transit)で唯一の中央案内式案内軌条、ラケット状ルートを1方向運転、均一200円運賃(子ども100円)、最大登坂勾配45パーミル……。

そんな注目ポイントがいっぱいの鉄道路線が、山万ユーカリが丘線。

全線で営業運転が始まったのが1983年。架線などないシンプルな単線高架軌道の上を、3両固定編成の1000形3本が、毎日ゆっくり、ラケット状ルートを反時計回りに走っている。

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営業キロは4.1km、起点は京成電鉄線と接続するユーカリが丘駅で、終点はラケット状の分岐・合流部分に位置する公園駅。

ユーカリが丘駅を出た電車は、地区センター駅、公園駅ととまり、反時計回りで環状部に入り、女子大駅、中学校駅、井野駅、公園駅と戻り、再び地区センター駅を経てユーカリが丘駅へと戻ってくる。

こうした全国の鉄道のなかでもユニークな要素がいっぱい詰まった山万ユーカリが丘線は、もうひとつ、夏の風物詩がある。

なんと、冷房がない!

関東地方ではほぼ解消した非冷房車両が、ここ山万ユーカリが丘線では現役。1000形は(いま話題の)冷房装置をもともと載せてない。

山万は夏になると、この非冷房車両に乗る客にむけて、「暑さをしのいでほしい」という想いから、冷たいおしぼりとうちわを配布している。

ことしは7月1日から9月30日まで実施。1000形中間車に10~16時の間、ユーカリが丘駅に16~22時の間、クーラーボックスを設置。

ヘッドマークを掲出した「おしぼり電車」なる演出も実施し、「#おしぼり電車」「#ユーカリが丘線」「#ysenstagram」をつけてSNSに投稿してと呼びかけている。

―――距離確保やマスク着用を心がけながら、冷えた缶ビールを買い込んでユーカリが丘線に揺られる10分もいい。冷たいおしぼりといっしょに、田園地帯やトンネルをゆっくりと行く新交通システムの10分旅へ。