JR東海の新型「HC85系」は「静かな車両」だった【乗車レポ】

2021.08.25

JR名古屋駅に停車中のHC85系
HC85系普通車の座席。沿線の紅葉と、祭り・花火のイメージをグラデーションで表現

2021年8月24日、JR東海の新型車両「HC85系」の試乗会が行われました。

HC85系は、平成初期から特急「ひだ」や「南紀」で活躍してきた「キハ85系」の老朽化を受け、これを置き換えるため導入されるハイブリッド方式の鉄道車両です(「HC」は「Hybrid Car」から)。

コンセプトは「ハイブリッド技術の導入による『安全性の向上』『快適性の向上』『環境負荷の低減』を図る次世代の優等車両」で、キハ85系と同等の走行性能――最高速度120km/hは、ハイブリッド方式の鉄道車両としては国内初――を保ちながら、最新技術をふんだんに盛り込み乗り心地などを大幅に向上させています。

JR東海は2022年度から2023年度にかけてHC85系を64両新製し、また現在走行試験に使用している4両も量産車仕様に改造することで、全68両の投入を予定しています。今回はそんなHC85系について、実際に乗ってみてまずは利用者目線で気になった部分をレポートしてみましょう。

キハ85系と乗り比べ、その静けさに出た言葉は「空調音が気になる」

JR名古屋駅に到着したキハ85系

今回の報道陣向け試乗会では、JR名古屋駅から従来のキハ85系に乗車し、JR鵜沼駅でHC85系試験走行車に乗り換え、JR名古屋駅まで折り返しました。平成の名車と令和デビューの新型車両を実際に乗り比べてみようというわけです。

実際に乗ってみて違いを体感したのは、やはり「静粛性」と「快適性」の二点。

従来車両であるキハ85系の特徴といえば、何と言っても「カミンズエンジン」の独特な音です。当時発足したばかりのJR東海は、カミンズ社のエンジンを採用することで最高速度120km/hを達成、特急「ひだ」の到達時分短縮を果たします。そうした経緯もあってか、このエンジン音とキハ85系のイメージは分かち難く結びつけられ、音を聞くために乗りに行くファンも散見されるほど。

キハ85系車内の様子、この中で独特なエンジン音に耳を傾けた方も多いのではないでしょうか

一方のHC85系では客室内の騒音レベルが電車並みに抑えられており、出発時もエンジン音はほとんど気になりません。スゥッとした、滑らかで静かな加速とでも言うべきでしょうか。120km/h相当の速度に到達してもうるさいと感じるようなことはなく、振動も相応に抑えられていました。防振ゴムの2重化といった技術の積み重ね、気動車に特有のギアチェンジの解消などもこうした快適性の向上に貢献しているようです。

従来のキハ85系とのもう一つの大きな違いは駅停車時の挙動にあります。キハ85系では空調や照明など車内サービス用の電力を確保するため、駅停車中もエンジンを稼働させ続ける必要がありました。一方のHC85系では「アイドリングストップ」を採用。エンジンを停止させても、蓄電池の電力で空調や照明を動かすことができます。

HC85系のアイドリングストップ、電気の流れを解説

乗車中にアイドリングストップを実施した際の感想は「空調の音が気になる」でした。真夏の報道公開ですから車内でも冷房を効かせているわけで、しかしながらキハ85系乗車中は意識にも上らなかった空調音が、HC85系では目立つ。それほど静かだったのです。

HC85系にはその他にもエンジンの削減による環境性能の向上(CO2など排出量減)、0.2秒ごとに4000項目のデータを記録・分析サーバに送信して不具合予兆の把握やメンテナンスの品質向上に役立てるといった「利用者目線では目立たない」凄みもありますが(エンジン付き車両の常時状態監視は国内初)、純粋に一利用者として乗車した感想としてやはり目立つのは車内の静けさ、揺れなさ。もし数年後、新生「ひだ」や「南紀」に乗る機会があれば、まずは耳を澄ませて違いを感じていただきたいな、と思います。

東海道新幹線新型車両「N700S」同様、全座席にコンセントが付いているのも利用者目線では嬉しいポイントです

文/写真:一橋正浩


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