東急電鉄は、道路維持管理システム「インフラドクター」の鉄道版を建築限界検査・トンネル特別全般検査に導入する。

インフラドクターは、首都高技術、朝日航洋、エリジオンの3社で共同開発した道路維持管理システム。点群取得、各種管理台帳データ、構造物の変状検出等を一体的に管理・運用できる。

建築限界は、列車の安全走行を維持するため、列車の動揺や線路線形などを考慮し設定した、標識や建物などを設けてはならない空間をいう。

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東急電鉄が今回、この道路維持管理システム インフラドクターを鉄道の維持管理に応用し鉄道版インフラドクターとして実用化したのは、大手民鉄で初めてで、鉄道事業者全体のなかでは伊豆急に次ぐ2例目という。

同社は、9月7日から東急線内で同システムを使い、実際の計測作業を始める。

東急電鉄 鉄道版インフラドクターは、東急、首都高速道路、首都高技術が、鉄道施設の保守点検・管理作業の精度向上と効率化を目的に共同開発を進めてきた技術。

レーザースキャナによる3次元点群データと、高解像度カメラの画像データを取得・解析することで、東急線全線(世田谷線・こどもの国線を除く)における建築限界検査・トンネル(2021年度計測:13か所・約2.9km)の特別全般検査を行う。(※2021年9月7日15時12分追記、伊豆急ではトンネル特別全般検査へ導入されたが、建築限界検査については鉄道業界で初めて導入する)

伊豆急版インフラドクターとの違いについては、「伊豆急のインフラドクターは、モーターカーで引っ張る台車にMMS計測車両(黄色と赤の車)を載せている。(東急線への導入においては)MMS搭載車両を載せられる大きな台車の確保が難しいから、台車にMMSとカメラを設置することとしている」(東急広報)とのこと。(※2021年9月7日15時12分、内容を一部修正しました)

検査精度のバラつきや技術継承、技術者不足、検査費用の増加などの課題を解決

鉄道の建築限界検査やトンネルの特別全般検査はこれまで、おもに終電後の夜間時間帯に技術者による目視や計測などにより実施してきた。

とくに、トンネルの特別全般検査においては、現地に足場を組み立てて高所を含めたすべての部位を近接目視で検査を行い、異常が疑われる箇所の打音調査や、検査結果の変状展開図の作成など、多くの人手が必要となり、検査精度のバラつきや技術継承、技術者不足、検査費用の増加などが課題だった。

この鉄道版インフラドクターを導入することで、現地での人による検査や計測が機械計測に代替され、DX化が図れるとともに、3次元点群データや高解像度カメラ画像の解析により、トンネル各部位の浮きや剥離などの要注意箇所を効率的に抽出することができ、打音調査などが必要な箇所の絞り込みが可能に。

これにより、検査作業の効率化、検査精度の向上や技術継承支援につなげるとともに、検査費用は最大で約3割減少をめざし、鉄道維持管理における固定費削減が期待できる。

また、鉄道版インフラドクターは、計測した各データからトンネル壁面の展開図などを作成することができ、報告書の作成といった事務作業も大幅に省力化できる。

東急はさらに、インフラドクターの特徴である地理情報システム(GIS:Geographic Information System)と3次元点群データ、全方位動画の連携によるデータマネジメントなど、施設管理の更なる高度化・拡張を図る。

画像:東急電鉄
記事:鉄道チャンネル(https://tetsudo-ch.com/