大きな車両基地を想わせる上屋の下に、線路の進路をふさぐように白い乗用車がいる。

レールの表面は赤錆びて、列車の往来が途絶えたような気配。架線柱や架線があることから、電車がそのまま入れたか……。

この画像はちょうど10年前、2012年の光景。

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ここは、西武所沢車両工場。西武鉄道が自社車両を製造・検査・修繕していた拠点基地。1947(昭和22)年に開設し、2000(平成12)年まで稼働していた。

画像は同工場の出入線。この背後で所沢駅と線路がつながっていた。

同工場現場は、所沢駅西口から南へ歩いてすぐ。いまの西武所沢ショッピングセンター・所沢ワルツの裏手にあった。

国土地理院1989年の上空写真でみてみると↓↓↓

まだ西武所沢車両工場が稼働していたころ。

車両工場の建屋の間には、車両などを水平移動できるトラバーサーもみえる。敷地の南側には、ヘリコプターの離着陸場もみえる。

ここ西武所沢車両工場では、鉄道車両の他、商用車や特殊車両、遊園地アトラクション、砂利採取機械の製造や、西武グループの西武バス車両の各整備なども担当。さらにヘリコプター会社の保守管理なども行っていた。

開設当初から西武鉄道の車両のほとんどがここ西武所沢車両工場でつくられていたなか、1969(昭和44)年初代レッドアロー5000系特急形電車を日立製作所でつくり始めたのを皮切りに、徐々に他社メーカーへ製造を委ねていった。

自社車両の定期検査なども2000(平成12)年で終了。この所沢車両工場が担ってきた仕事は、所沢から20km秩父寄りに離れた武蔵丘車両検修場に譲った。

いまこの土地は、所沢駅西口区画整理がすすんでいる。駅も街も変わり続ける“西武の本拠地”―――所沢。下の3枚の画像のなかにも、いまとは違った10年前の光景がちらっとみえる。