国内ですでに使われているバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)の特許期間が終了したあとに、先行バイオ医薬品と同じような品質・有効性・安全性が確認されたバイオ医薬品として、別の製薬会社が厚生労働省の承認を得て製造・販売することができる薬―――バイオシミラー。

初収載時の薬価としても先行バイオ医薬品の約7割と、高騰し続けている国民医療費の軽減に貢献できると期待されているものの、ジェネリック医薬品ほど普及していないという現状がある。

また、高齢化と医療の高度化により、日本の医療費は約43兆円(平成30年度)で年々増え続けている中、医療保険制度に対する国や自治体による公費負担も増え続け、国民皆保険制度の維持のために、バイオシミラーの普及が必要不可欠といわれている。

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こうした実情のなか、ファイザーが「バイオシミラーの現状と課題」と題したセミナーを大手町三井カンファレンスで開催。

同セミナーでは、「バイオシミラーの現状と課題」を患者・医療従事者の目線で解説し、本年は、2年に1度の公的医療保険価格(診療報酬)改定の年にあたることから、国の政策の観点からもバイオシミラーを説明した。

バイオシミラーとは――ファイザー小野知穂氏

◆ファイザー オンコロジー部門 メディカル・アフェアーズ部 小野知穂氏

近年、バイオ医薬品の承認品目割合は急激に増加しており、従来の医薬品では治療が困難であった様々な疾患に革新をもたらしています。

バイオ医薬品は、一般的医薬品と比較し、開発・製造が複雑で開発費用がかかるため薬価が高額になることが一般的です。

バイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーの開発費用も高額であり、ジェネリック医薬品よりも薬価も高額となることが実情です。

バイオシミラーの開発は、品質特性解析、非臨床試験、臨床薬理試験、臨床試験を段階的に実施し、包括的エビデンスにもとづいて先行バイオ医薬品と同等/同質の品質・有効性・安全性が担保されています。

いっぽうで、薬理学的に同様の作用メカニズムと考えられる場合は、臨床試験を実施せずに先行バイオ医薬品の効能・効果をバイオシミラーの効能・効果として付与される場合(外挿)もあります。

患者の立場から――桜井なおみ氏

◆一般社団法人CSR プロジェクト代表理事 桜井なおみ氏

バイオシミラーについて、患者側の懸念としては、(1)『バイオシミラー』という名前の普及が十分ではない、(2)「先発品同様に信頼できるの?」といった有効性・安全性、(3)「バイオシミラーは安定して供給されるの?」という安定供給、(4)「実際に何が使え、使われているの?」という選択権、(5)「患者負担は安くなるの?」といった経済性などが挙げられます。

こうした患者側の懸念が複数あるなか、バイオシミラー普及に向けて、まず『聞いたことがない』患者、市民への啓発を行うとともに、有効性と安全性は一定の幅の中でおさまるように先発品もバイオシミラーも厳しい品質管理が行われているということや、安定供給の観点からも期待されていることなどもあわせて伝えてほしいと思います。

バイオシミラーは病院単位で導入されることが多いため患者が選択できる場面は少ないかもしれませんが、不安なことは医師・薬剤師に気軽に相談するコミュニケーションが大事です。

バイオシミラーの価格は先行バイオ医薬品の7割程度なので、個々人の負担は、高額療養費制度の自己負担は変わらないかもしれませんが、医療費全体へのインパクトは大きいことから、国民皆保険制度を次世代につなげていくという視点も重要です。

こうしたバイオシミラーの普及には、医薬品分野における患者・市民参画を推し進めてほしいと思います。

国民の不安、懸念に対して聴く機会の仕組みづくりや、医薬に能動的に関われない仕組みを改善し「知る機会」をつくること、我が国の公衆衛生・社会保障の歴史や背景、仕組みについて国民視点から議論する場などが求められています。

医療従事者、国の政策の立場から――坂巻弘之先生

◆神奈川県立保健福祉大学大学院教授 坂巻弘之先生

我が国のバイオシミラー10 年余の経験から、バイオシミラー承認数は着実に増加(特に 2017 年以降)しています。

また、使用数量・市場規模も増加し、経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)他、医薬品産業ビジョン2021 で使用促進の方針が示されており、普及啓発の取り組みも実施されています。

2020 年に在宅自己注射指導加算に診療報酬上の評価が導入され、2022年4月にはさらに外来化学療法にも対象が拡大し、医療関係者の受け入れも増加しています。

ただし切替えについてのルール透明性などが求められているいっぽうで、患者にはまだまだ認知されていないのが現状です。

今後は、バイオシミラー・バイオ医薬品開発のさらなる促進や、バイオシミラーによる持続可能な社会の実現に向け、安定供給やコスト低減のための連続生産に向けた製造方法革新や国内製造、リアルワールドエビデンスを用いたレギュラトリーサイエンスの在り方の検討、医療費・薬剤費への影響と持続可能な社会保障制度、バイオシミラーの普及啓発、多職種・国民の参画(multi-stakeholder engagement)などが求められます。

ファイザー バイオシミラーの取り組み――松元亮介氏

◆ファイザー株式会社 オンコロジー部門 マーケティング部 松元亮介氏

バイオ医薬品で30年以上、バイオシミラーで10年以上の開発実績があるファイザーのバイオシミラーには、「自社ですべての工程を一貫管理」「医療安全に配慮した製剤・包装の工夫」「患者を中心に考えた、適正使用情報」という3つの特徴があります。

世界各国の基準を満たすファイザー品質のバイオシミラーをお届けするために、ファイザーの最先端のサイエンスとバイオテクノロジーによって、自社ですべての工程を一貫管理し、ファイザーのグローバルサプライネットワークを通じて供給されています。

2021年5月からは、患者・一般向けのバイオシミラー情報提供サイト『バイオシミラー.jp』(https://www.pfizer-biosimilar.jp/)を公開。

バイオシミラーを正しくご理解いただき、患者とそのご家族が安心して治療に臨めるよう、「バイオシミラーとは?」「なぜバイオシミラー?」「経済的負担を軽くしたい」といったテーマで詳しく解説しています。

(以上 ファイザー「バイオシミラーの現状と課題」セミナー)