西武HDが2022年5月12日に発表した2022年3月期の決算補足説明資料に「サステナ車両」という文言が記載されており、鉄道ファンの間で大きな話題を呼んでいます。現時点で分かっていることをまとめてみました。

「2023/3期の取り組み内容」の「中期経営計画における取り組みの進捗状況(経営改革)」に記載。(画像は西武HDの2022年3月期決算補足説明資料「2022年3月期 決算実績概況および『西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」から)

「鉄道車両については、引き続き車両運用の見直しや買い替え計画を組み合わせ、保有車両数を適正化するとともに、 新造車両に限らず、環境負荷の少ない『サステナ車両 ※1 の導入』を進め、省エネ化、固定費削減を前倒しで実現」(同資料から)

この「サステナ車両」については、「※1 無塗装車体、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両を当社独自の呼称として定義」と記されており、導入効果としては「メンテナンスの効率」「使用電力量の削減」「車両リサイクルによるサステナビリティへの貢献」の3点が挙げられています。

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目指す方向は「車両数の適正化」「無塗装+VVVF車両比率の向上」で、2022年度末までに車両数を1,227両に削減するとともに、無塗装+VVVF車両比率を56.2%に引き上げる予定です。ただし「2022年度末の導入予定には他社からの『サステナ車両』の譲受は含んでいない」とも書かれており、導入時期は分かっていません。

JRや大手私鉄の中古車両が地方私鉄に譲渡され「第二の人生」を歩むのは珍しいことではありませんが、関東大手の西武鉄道が他社から鉄道車両を譲受するということで、鉄道ファンの間では「どこから車両を導入するのか」といった議論が盛り上がっています。

総合車両製作所の「sustina」とは違うもの?

総合車両製作所の「sustina」ブランドといえばJR山手線のE235系などが有名です

「サステナ車両」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、総合車両製作所(J-TREC)の「sustina」ブランド。次世代ステンレス車両として、JR東日本や東急電鉄などで採用されるほか、海外へも輸出されています。

しかしながら「サステナ車両」はあくまで「西武鉄道独自の呼称」であり、「sustina」とは異なります。結果的に「sustina」ブランドの車両が「サステナ車両」として導入される可能性もゼロではないでしょうが、登場して10年も経っていない車両ばかりですから、中古車両として他社へ行くというのも考えづらいものがあります。

VVVF化/無塗装化を推進

気になるのは従来車両の置き換えです。西武鉄道広報部に確認してみました。現在同社が保有している従来の制御方式の車両については、「すべてを『サステナ車両』に置き換えるという計画ではない」そうで、「VVVF化/無塗装化を進めるうえで、新造車両とサステナ車両のベストミックスをスピード感を持って検討・導入していきたい」とのことです。

2022年5月現在、西武鉄道の車両で採用されている制御方式は「抵抗制御」「界磁チョッパ制御」「VVVF制御」の3種類。「サステナ車両」導入の趣旨を考えると、界磁チョッパ制御の2000系や抵抗制御の101系、4000系、10000系(NRA、5次車はVVVF制御)あたりが今後置き換え対象になっていくのではないかと考えられますが、詳細が判明するのはまだ先の話になりそうです。

記事:一橋正浩