ターニングポイントは北陸新幹線金沢開業

2022年に開業25周年を迎えた北越急行の歴史は、2015年3月に北陸新幹線長野―金沢間が延伸開業するまでの前期と、新幹線開業後の後期に大別できます。

新幹線金沢開業まで東京から北陸方面への移動は、ほくほく線経由が一般的でした。上越新幹線越後湯沢でほくほく線の在来線特急「はくたか」に乗り換えて北陸に向かう。開業から18年間、ほくほく線は首都圏と北陸をつなぐ幹線の一部でした。

幹線時代の北越急行、使命は東京から北陸に向かう旅客を少しでも早く通すことでした。その手段が、最高時速160キロの高速運転だったのです。

「少しでも長く沿線に滞在してもらう」

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ところが、北陸新幹線開業で目的は大きく変わりました。開業前が「なるべく早く乗客を運ぶ」なら、開業後は「少しでも長く沿線に滞在してもらう」です。

幹線からローカル線への移行に合わせて登場したのが、「超快速スノーラビット」です。なるべく長くとは矛盾しますが、「超快速スノーラビット」は「なるべく早く」という幹線時代の目的を維持した列車でした。

HK100形の車内。車端部はロング、中央がクロスのセミクロスシートです(筆者撮影)

主なターゲットは、東京から上越や十日町に向かうビジネスマンや観光客。東京―上越間は北陸新幹線(上越妙高駅)と、上越新幹線+ほくほく線(越後湯沢乗り換えで直江津駅へ)のダブルルート化しました。

「超快速スノーラビット」は2015年3月のダイヤ改正で、朝下り1本、午後上り1本を設定。停車駅を十日町のみに絞ることで、普通運賃で乗車できる列車としては日本一となる表定速度88.6キロ(ほくほく線内に限れば99キロ)を達成。後のダイヤ改正で増発、停車駅を増やした超快速も設定されましたが、2022年3月のダイヤ改正で最速便を含む1往復が廃止となり、現在は下り1本のみという状況です。

もちろん、「超快速スノーラビット」には相応の存在価値がありましたが、ビジネスマンや観光客の多くは乗り換えなしの北陸新幹線を選択しました。コロナによる業務効率化が求められる中で、北越急行は存続をあきらめるという重い決断を下しました。

北越急行は今春のダイヤ改正で、利用実態にあわせ全列車を各駅停車に変更。最高速度も現在の時速110キロから、95キロに引き下げます。特急「はくたか」運転時は、普通も特急に追い付かれない速度で走る必要がありましたが、普通列車だけのダイヤで特急を意識する必要はなくなりました。

現行ダイヤの「超快速スノーラビット」は直江津で接続する、同じ三セクのえちごトキめき鉄道に直通運転して、妙高はねうまライン新井に乗り入れますが、改正後は直通運転も取りやめます。