経済学者 蔵研也「加熱式たばこ増税にNO! むしろ減税すべき」 収入の半分を国に納める時代に考える、日本の税金のおかしなカラクリを斬る
ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻、中国台湾有事など、国際情勢の緊迫が加速するなか、岸田文雄首相は「5年以内に防衛力を抜本的に強化する」とし、これまで国内総生産(GDP)比で1%を目安にしていた防衛費を、自民党はGDP比2%以上を念頭に増額するよう求めている。
そんななか、たばこ税の増税に着目し、加熱式たばこの増税に反対する署名請願(現在2万3000人超が署名中)を展開する経済学者がいる。
それが、自由主義研究所 蔵研也 所長
自由主義研究所 蔵研也 所長は5月に東京・帝国ホテルで「たばこ増税を再考する」と題したトークセッションを開催。「過剰な税は財産権の侵害」「自分が属さないマイノリティへの課税」といった話題も交えて持論を展開した。
そこで、蔵研也 所長が加熱式たばこの増税に反対する理由と考えを、聞いてみよう。
「たばこのみを過剰な課税対象とする合理的な根拠はない」
「たばこは安易な増税対象となることが多く、約2兆円程度の巨額の税負担が、たばこ消費者に課されています。
たばこに対して特別な課税を行う理由は、たばこは食料品などのような生活必需品とは異なる特殊な嗜好品としての性格を有することにあるとされています。
しかし、数あるその他の嗜好品のなかから、たばこのみを過剰な課税対象とする合理的な根拠はありません」
「ハームリダクションの考え方を積極的に採用することが望ましい」
「また、2010年度(平成22年度)税制改正大綱では『たばこ税については、国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、将来に向かって、税率を引き上げていく必要がある』とされており、たばこ増税が行われる理由として健康目的のニュアンスが盛り込まれています。
ただし、喫煙をいますぐ一律に禁止することは、たばこ消費者が日本に数千万人単位で現実に存在している以上非現実的であり、その有害性を低減するためのハームリダクションの考え方を積極的に採用することが望ましいものと考えます」
「将来的な医療費低減にもつながる可能性」
―――ハームリダクションとは年齢やジェンダー、職業、社会的立場に関係なく、あくまでも本人の意思を尊重し、「害」(ハーム)を「減らす」(リダクション)ことを目的とした政策・プログラムとその実践のこと。
「実際、2010年度以降に急速に紙巻たばこの消費が低減している理由は、加熱式たばこが普及していることが原因のひとつとなっています。
紙巻きたばこにはすでに発がん性が明確に確認されています。
いっぽう、加熱式たばこも健康に対するリスクの存在が指摘されていますが、多くの研究機関がさまざまなエビデンスを蓄積している最中であり、ハームリダクションに寄与する技術革新に向けた取り組みが積極的に行われています。
加熱式たばこの技術革新によって、健康被害を低減するイノベーションに起こり、将来的な医療費低減にもつながる可能性があります」
「加熱式たばこの消費者に負担させる理由もない」
「2022年12月自民党税制調査会で、防衛費増額の財源を法人税・所得税・たばこ税の3つの税目を組み合わせてまかなうという増税案でいったんの決着を見ましたが、同調査会でも拙速な議論を避けるべきとする声も強く、2024年以降の適切な時期に増税を行うとされています。
実際、2024年のたばこ税は加熱式たばこの税率が引き上げられて、1本あたり3円程度の段階的な値上げが行われる可能性があります。
しかし、上述の通り、たばこの消費者はすでに約2兆円の税負担を実施しており、たばこのみが嗜好品として重く課税される根拠もなく、健康面等での技術革新が期待される加熱式たばこのみを増税対象とする増税案には合理性がありません。
まして、防衛費増額を加熱式たばこの消費者に極めて偏ったかたちで負担させる理由も見出せません。むしろ、加熱式たばこは減税すべきです」
2040年には国民負担率が70%を超えるという予測も
「また、平時の防衛費を安易に増税に頼ることは、一国の経済力をいたずらにき損することにもつながります。
したがって、経済的合理性、租税負担の公平性、ハームリダクション・技術革新の観点から、2024年に可能性がある加熱式たばこの増税に対して反対する署名請願を実施します。
本署名請願は自由民主党所属の税制調査会出席議員に提出するものとし、国政の意思決定に反映されることを求めます」(以上 自由主義研究所 蔵研也 所長)
―――自由主義研究所 蔵研也 所長はこのほか、日本の国民負担率(租税負担および社会保障負担を合わせた義務的な公的負担の国民所得に対する比率)が2021年度に48%を超えたことなどを踏まえ、「過剰な税は財産権の侵害」と指摘。
超高齢化で社会保障費が増加することから、2040年には国民負担率が70%を超えるという予測もあり、所得の半分以上が税金や社会保障負担として徴収されることにも問題視する。
また国民所得の半分以上をもって徴収された金は、「その半分が補助金や各種手当などとなって再分配される。残りの半分は……」といった衝撃的な日本の税金構造についても明かしていた。
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蔵研也(経済学者・自由主義研究所所長)
1966年、富山県氷見市生まれ。1988年、東京大学法学部卒業。1991年、サンフランシスコ大学経済学MA(修士号)取得。1995年、カリフォルニア大学サンディエゴ校経済学Ph.D.取得。同年、名古屋商科大学経済学部専任講師。1997年、岐阜聖徳学園大学経済情報学部准教授。2022年、岐阜聖徳学園大学退職。
著書 『現代のマクロ経済学 ルーカスとその還元主義的方法論をめぐって』日本図書刊行会 1997年、『国家は、いらない』洋泉社 2007年、『無政府社会と法の進化 アナルコキャピタリズムの是非』木鐸社 2007年、『リバタリアン宣言』朝日新書 2007年、『18歳から考える経済と社会の見方』春秋社 2016年。『ハイエクといっしょに現代社会について考えよう』春秋社2022年。