大手町の森
大手町の森

連日の猛暑で都心のヒートアイランド現象が深刻化するなか、東京駅周辺の涼しい癒しスポットとして注目を集めているのが「大手町の森」です。東京メトロ・都営地下鉄の大手町駅で地下鉄を降りて地上に向かうと、コンクリートジャングルに突然本物の豊かな自然が現れて驚いた……という方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

大手町の森は、大規模再開発により2013年に開業した「大手町タワー」(※全体竣工は2014年)の敷地内に整備されたもので、面積はおよそ3,600平米。駅直結の商業施設「OOTEMORI」など、周辺エリアに安らぎを与える憩いの場として親しまれており、その心地よさを活かしたイベントも定期的に開催されています。

開発に携わった東京建物は、都市緑地が人々のウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証するため、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所と共同研究を実施。同時に大手町の森の温熱環境状況を測定したところ、森の内部は周辺の歩道よりも気温が低く、熱中症リスクも抑えられることが実証されました。

生態系を保全しつつ人々に涼をもたらす、都市緑地のリアルな効果に迫ります。

オフィス街に根付く「本物の森」、どうやって作り上げた?

大手町の森
本物の森が日差しから守ってくれる、今では贅沢な空間と言えるのかもしれません

高層ビル群の足元、大手町タワーの敷地には、約3,600平方メートルの大手町の森が広がっています。敷地全体のおよそ三分の一を占める豊かな自然は、どのようにして生まれたのでしょうか。

大手町の森は千葉県君津市の山林で約3年かけて土壌や植物を育成し、そのまま移植する「プレフォレスト工法」でつくられています。「都市を再生しながら、自然環境を再生する。人が心地よく、生き物が棲みやすい、自然・郷土の森。」を開発コンセプトとしており、本物の森を構成する3つの要素「疎密」「異齢」「混交」を再現しているのが特徴です。

【本物の森を構成する3つの要素】
・疎密……複雑な起伏の中で木が密集したりまばらだったりすること。
・異齢……幹の太さや木の高さなどさまざまな樹齢の木があり常に入れ替わっていること。
・混交……常緑樹・落葉樹・地被類など多様な種類の樹木が混ざっていること。

2021年の調査では植物類が208種、昆虫類が129種、鳥類が13種確認されており、都会のど真ん中にレッドリストにも掲載されるような希少種や野生の鳥たちが息づく生態系ネットワークが形成されています。

そんな大手町の森は、グリーンインフラの継続的な取り組みとして高く評価されており、2025年には第6回グリーンインフラ大賞 国土交通大臣賞を受賞。10年以上にわたり「本物の森」を維持管理し、心地よさを活かしたイベントを定期的に開催するなどして、来訪者や周辺のオフィスワーカーが緑に親しむ機会を創出したことが高く評価されました。

歩道と森の中で「気温差3℃以上」を記録

この森がもたらす最大の恩恵が「涼しさ」です。東京建物が2025年8月に実施した温熱環境調査によると、よく晴れた昼間の時間帯で、永代通り側の歩道と森の中とでは最高気温に約3℃の差が生じていました。

赤外線カメラによる地表面温度の測定でも、歩道が40℃を超える一方で、落ち葉や草に覆われた森の中は30℃台前半をキープ。地表面が落ち葉や草で覆われていること、樹冠により日陰が形成されていることなどが、しっかりと数値を押し下げた理由と考えられます。

大手町の森暑熱調査結果
大手町の森・地表面温度の計測

さらに、熱中症リスクの指標となる「暑さ指数(WBGT)」を見ても、周辺歩道が高齢者において危険性が大きくなる「危険(31以上)」に達している時間帯に、森の中は一段階低い「厳重警戒」や「警戒」レベルにとどまっていました。外回りの営業中やランチタイム、この空間に逃げ込むだけで体の負担がどれほど和らぐか、想像に難くありません。

大手町の森暑熱調査結果
熱中症リスクの低減にも寄与する

2026年3月まで森林総合研究所に所属していた、國學院大學の高山範理教授は「大手町の森で周辺歩道より低い気温が観測されたことは、都市緑地による暑熱緩和の可能性を示す興味深い結果です。都心で人々が一息つき、心身を整えられる場としての価値も期待されます」とコメントしています。

北欧に伝わる休息の文化になぞらえたイベント「FIKA」なども定期的に開催されている大手町の森。忙しい毎日のふとした隙間に、木漏れ日の中で一息ついてみてはいかがでしょうか。

(画像:東京建物株式会社)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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