【乗車記】実質夜行?話題沸騰の新幹線「東海道ルミエールエクスプレス」に乗車してみた 東京22時発、京都・新大阪に6時台着 見どころは岐阜羽島の素晴らし過ぎる朝

「新幹線で夜を明かし、翌朝から目的地でフル稼働する」——そんな夢の移動手段が実現しました。2026年8月8日、JR東海は「東海道ルミエールエクスプレス」を初運行しました。首都圏を22時台に出発し、始発の新幹線よりも早く関西圏に到着するという話題沸騰の特別列車。実際に乗車し、新幹線で夜を越えるという新しい旅の全貌をレポートします!
【参考】新幹線で車中泊して1.5万円!? 東海道新幹線が異色の夜行「ルミエールエクスプレス」8/8運行! 気になる乗車ルールを解説(7/3発売開始) https://tetsudo-ch.com/13031385.html
「東海道ルミエールエクスプレス」とは何なのか
名前の由来はフランス語の「光」から
そもそも「東海道ルミエールエクスプレス」とは何か。JR東海が夏の旅行やレジャーシーズンにおける様々な利用ニーズに応えるために設定した「当日出発・翌朝到着」の特別列車です。昨今の宿泊費の高騰や東京圏・関西圏の移動需要が増すなか、「夜間に移動するニーズがあるのでは」という想定のもと試験的に旅行商品として販売・運行されました。
運行ダイヤは東京22:00発→品川22:07発(乗車のみ)→新横浜22:18発(乗車のみ)→(岐阜羽島で長時間停車)→京都6:44着(降車のみ)→新大阪6:59着。列車名の「ルミエール」は、フランス語で「光」の意味。翌朝から目的地での時間を有効に使えるという列車の特徴を、「朝の光」と「新しい一日の始まり」をイメージできる言葉で表現しています。
通常、新幹線は「深夜帯のメンテナンス時間を確保する」「深夜の騒音発生を防ぐ」といった理由から、6時~23時59分の間で定期運行のダイヤが組まれており、深夜帯には運行しません。東海道新幹線の2026年春ダイヤ改正を見ると、23時59分品川着・23時59分広島着などギリギリを攻めている列車も出てきています。
「東海道ルミエールエクスプレス」もそれにならい、0時~6時の間は運行せず、岐阜羽島駅で長時間停車を行うことで、疑似的な「夜行列車」を実現しています。とはいえ深夜帯に走行しているわけではないため、JR東海は「夜行」という表現を使用していません。
「東海道ルミエールエクスプレス」の特別ルール
今回は初の試みということもあり、事前に特別なルールが周知されました。
・ドアの開放は一部時間のみ:岐阜羽島駅への到着後と発車前のそれぞれ30分程度のみドアが開放されます。係員の案内で改札内の自動販売機と喫煙所が利用可能ですが、改札外へは出られません。
・事前の買い出しが必須:岐阜羽島駅での売店営業や車内販売はありません。自動販売機も売り切れる可能性があるため、飲料などは乗車前の購入が推奨されていました。
・室内灯は常時点灯:夜間でも車内の照明は点灯したままとなります。
・保守作業の音と振動:停車中の時間帯は線路や設備等の保守作業が実施されるため、作業に伴う音や振動が車内まで届く可能性があります。
・車内サービスの制限:グリーン車であっても「モバイルオーダーサービス」の提供やおしぼりの配布はありません。また、車内はデッキやトイレを含め終日すべて禁煙です。
実際に乗車してみた
新横浜の次は岐阜羽島!
2026年8月8日、21時50分。JR東京駅の19番線に東海道ルミエールエクスプレスが入線してきました。使用車両はN700A(ラージA)です。


車両は1~9号車が通常プラン、10号車・12~16号車が女性専用プランという割り振り。座席数は502席ですが、キャンセル等もあったため、実際の乗車数は500名をやや下回ります(※正確な数字は後日追記いたします)。
列車は22時ちょうどに東京駅を出発し、瞬く間に品川、新横浜を通過。このあたりは車内放送にほんのわずかな違いがあるのを除けばいつもの東海道新幹線ですが、新横浜出発後は特別な車内放送が入りました。
「東海道ルミエールエクスプレスをご利用いただきましてありがとうございます。この列車は団体専用列車です。一般のお客様はご乗車いただけません。お乗り間違いされたお客様は巡回中の乗務員・係員までお声がけください。車掌室は8号車です。大きなお荷物をお持ちのお客様にご案内いたします。大きなお荷物はデッキの荷物置き場・網棚などを譲り合ってご使用いただけますようお願いいたします。なおこの電車は全車禁煙です。トイレ・洗面台を含めまして、車内でのお煙草はご遠慮ください。また、お席を離れるときは貴重品は身に着けていただくなど、貴重品の管理には十分ご注意ください。お困りごとがございましたら巡回しております乗務員・係員までお声がけください」
「各駅の到着時刻をご案内いたします。次の停車駅岐阜羽島には23時43分。京都には明日(みょうにち)の6時44分。終点の新大阪には6時59分の到着です。続きまして、岐阜羽島駅停車中のご案内です。岐阜羽島駅では指定された設備以外はご利用いただけません。駅到着後は30分ほどドアが開きますので、自動販売機および喫煙室がご利用いただけます。ドアを閉める際には係員の誘導等ございますので、係員の指示に従ってご乗車いただけますようご協力をお願いいたします。また、明朝にも30分ほどドアが開きます。次の停車駅は岐阜羽島です」
新横浜の次の停車駅が名古屋を飛ばして岐阜羽島!さすがに初めて聞きました。なお、名古屋には23時33分ごろに到着しますが、ドアは開けず運転停車するのみです。岐阜羽島まではすることもないので夜食をいただくことにします。

【参考】東京~新大阪の味めぐり!定番駅弁「東海道新幹線弁当」が7月21日にリニューアル発売 https://tetsudo-ch.com/13032561.html
岐阜羽島で夜明かし、朝焼けがエモ過ぎた

23時43分、名古屋からわずか10分ほどで岐阜羽島へ到着します。ここで30分ほどドアが開き、乗客の大半は車両の外へ。皆さん思い思いに駅名標や車両を撮影されていましたが、車内に残ってのんびりされている方も見かけました。
長時間停車するとはいえ、岐阜羽島駅では改札外に出られません。ホーム上の施設で利用できるのは喫煙室と自動販売機だけですから、純粋に「移動手段」として捉えた場合は車外に出るメリットは薄く、それなら車内でくつろぐ時間を長めに取りたいという方も少なからずいたのでしょう。今回は試験的な運行ということでイベント列車として楽しんでいる方が多いように見えますが、もし今後同じような列車が日常的に設定されるようになれば、長時間停車中は外に出ない方が多数派になるかもしれません。

それでも、朝は車両の外に出るべきです。「次」の機会があるかどうかは分かりませんが、もし同じようなルート・時間帯で運行するとしたら、岐阜羽島の朝焼けを見て欲しいから。

正直なところ「深夜に走るわけじゃないけど実質夜行列車みたいなものだし『夜行』って銘打っちゃっていいのでは?」という思いがあったことは否めません。でも早朝の岐阜羽島に昇る朝日と新幹線を眺めているうちに、これは「ルミエール」だと腑に落ちたのです。「夜行」という言葉に強く惹かれるのが鉄道ファンの心理だとしても、この列車を象徴するのは「朝の光」「新しい一日の始まり」の方だろうと。
ルミエールは翌朝6時16分に岐阜羽島を出発。朝を切り開くように疾走し、京都駅・新大阪駅に時間通りに到着しました。
【参考】東京まで「ひかり」で2時間、東海道新幹線「岐阜羽島駅」を訪れてみた【コラム】 https://tetsudo-ch.com/12982596.html
今後の展望は?第二弾も「前向きに検討したい」

二日で完売、想像以上の手ごたえ
今回の「東海道ルミエールエクスプレス」は、先に述べた通り、宿泊費の高騰や東京圏・関西圏の移動需要が増すなか、「夜間の移動ニーズがあるのではないか」という考えから出発したものです。JR東海 新幹線鉄道事業本部 運輸営業部 担当部長 小川陽久氏によりますと、構想は二年ほど前からあり、線路や電気設備のメンテナンスと列車の運行を両立させるために社内で調整を重ねてきたといいます。
旅行商品は発売から二日間で完売(※プランによって完売タイミングは異なります)したのですが、この手ごたえは想定以上だったとのことで、第二弾以降の運行についても、今回乗車された方の生の声をしっかり分析した上で「前向きに検討したい」と語りました。今回の運行は試験的な色合いも強く感じられるものでしたので、今後継続して設定されるとしたら停車駅や料金、販売席数など内容は大きく変わるかもしれません。
【独自視点】狙い目は夜行バスに流れるライブ客か?
「東海道ルミエールエクスプレス」には女性専用車両も多数設定されており、これは普段の東海道新幹線利用客(ビジネス・旅行)とはだいぶ異なるように感じられます。そのことを小川部長に質問したところ、具体的な数字があったわけではないとしつつも、「イベント帰りに夜行バスを利用されている方が多いということで、一定程度(女性専用席を)設けても買っていただけるのではないかと考えた」といった趣旨の回答をいただきました。
ここから先は返答を踏まえたうえでの記者の見解になりますが、「東海道ルミエールエクスプレス」が密かに狙っているのは「ライブなど夜遅くまで開催しているイベントの参加者」ではないかと考えています。0時~6時に運行しない新幹線では、帰りの電車に間に合わないから途中で退出するという客層は取れても、最後まで参加したいから出発の遅い夜行バスを選ぶ、あるいは東阪間でも夜の高速道路を飛ばして帰るという客層は拾えません。
もちろん「安さ」を理由に夜行バスを選ぶ方は、東海道ルミエールエクスプレスがどれだけ安かろうと新幹線を選ぶことはないでしょう。一方で、値段ではなく時間的な制約により夜行バス以外に選択肢がなかった方にとっては、設備が快適で深夜帯に移動しない(揺れもない)新幹線の方が夜間移動の手段として魅力的に映るでしょう。
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実際には保守との兼ね合いでそう頻繁に運転できるものでもなさそうですが、宿だけではなく夜行バスも運転士不足でパンクしている現状に鑑みると、夜遅くまで開催しているイベントの客層を新幹線が拾いに行く未来もあり得ます。今回のように窓際席だけでも一編成で500名は運べますから、夜行バス10台分程度の需要は吸収できる計算です。
まあ、実際に蓋を開けてみると「夜行バスには乗りたくないけど車の運転はできないし、サンライズも(定期下りは)大阪には停まらないから、こういう寝台急行銀河みたいな列車が欲しかったんだ」という声が大多数……なんてこともあるかも。「次」のルミエールが走るとして、あなたならこの列車をどう使いますか?
記事:一橋正浩
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