さて、ようやく箱根登山鉄道の標準軌線に乗りますが、実は大きな問題があります。箱根湯本から先頭車両に乗って前面展望を撮っていた場合「出山信号場」でスイッチ・バックをするので後方展望になってしまいます。車内はすごく混んでいるので3両を移動することはほぼ不可能です。

とは言え、すぐに大平台駅で再度スイッチ・バックして前面展望になります。しかし、すぐの上大平台信号場で三度(みたび)スイッチ・バックして終点の強羅までが後方展望になってしまうのです。

通常の【私鉄に乗ろう】の場合は、画像を整理してあたかも前面展望だけという雰囲気に編集していますが、今回は諦めて校正用語で言うところの「ママ」で進行します。つまり時系列的に”そのまんま”です。

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では、箱根湯本駅3番ホームから出発します。構内踏切を渡った右が臨時4番ホーム。3番ホームに停車している車両に給水していることがよくあります。

いきなり凄い勾配です。

ほとんど助走も無く、80パーミルの勾配標識。先に見えるガードで車両を横から写した写真が有名です。全長が15mに満たない車両がガードの横から撮った写真では前後で1m以上の高低差がでます。

ぐいぐい登っていきます。

最初のトンネルは24.1mの湯本隧道。

2つ目の地蔵山隧道(183.1m)を抜けるとすぐにまた194.1mの塔ノ峰隧道。トンネルが続きます。

塔ノ峰隧道を出たところに標高153mの塔ノ沢駅。箱根湯本駅から1.2kmで57m登ったことになります。国道1号線沿いには古い温泉旅館が多くあります。1泊10万円という超高級旅館もあったりします。泊まったコトないですけど。

列車交換するのは、1981年(昭和56年)に導入された1000形電車、1984年(昭和59年)に増備された編成です。愛称はベルニナⅡ号。2004年(平成16年)に冷房改造が施され2000系の中間車両を挟んだ3両固定編成となっています。1982年(昭和57年)鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞した車両です。

左にカーブしたホームで眼の前が登山鉄道では最長の大ヶ嶽隧道(317.9m)。前面展望で前を向いているし混み合っていてドアまでも移動できないので、駅名標は撮れませんでした。

大ヶ嶽隧道を抜けると杉山隧道(148.9m)が見えます。

杉山隧道東口。奥に隧道を出た所にある早川橋梁が幽かに見えます。

という感じでぐいぐい登っていきます。【私鉄に乗ろう95】箱根登山鉄道 その5 に続きます。

追記:

御存知の様に2019年10月12日、関東から東北を襲った超大型の台風19号が箱根登山鉄道に甚大な被害をもたらしました。箱根周辺では、1,000ミリを越えるトンデモナイ雨量が記録されたのでした。ニュース映像などを見る限りでは路盤や橋梁などの被害は凄まじい状態です。長い歴史と風雪に耐えてきた箱根登山鉄道が箱根湯本駅と強羅駅間で運休という事態になっています。

箱根登山鉄道は運行開始後、1923年(大正12年)の関東大震災では建造物のほとんどが倒壊してしまい、復旧して運行が再開されるまでには1年近い期間がかかりました。他にも事件や事故に遭遇し箱根登山鉄道は創立以来最大の危機を迎えたのでした。米一升が42銭という時代に300万円という被害総額だったのです。

今回の台風被害では、宮ノ下〜小涌谷間で23mも線路が押し流されたり、崩落した土石が線路を埋めている区間、橋梁流失など20ヵ所以上などのニュースが流されています。

事態はなお流動的ですが、被害に遭われた箱根登山鉄道にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い箱根登山鉄道の復旧を心からお祈りいたします。

また復旧などの情報も随時。お知らせいたします。

(写真・記事/住田至朗)