杉山隧道を出るとすぐに早川橋梁。高さ43mの谷を渡りますが、塗装工事中で覆いがしてあって周囲は見えませんでした。橋の長さは63.4m。現存する日本最古の鉄道橋。

架橋したタイミングが第一次世界大戦中、輸入資材が途絶していたため1888年(明治21年)に製造され東海道本線の天竜川に架けられていた中古のトラスを鐵道院から払い下げてもらって施工したものです。当時は神奈川県知事から「箱根の玄関口に使い古しの橋を架けるのは景観を損ねる」という反対があったりしました。後に改築するという条件で工事を開始したそうです。その後改築は行われていません。

深い谷に架橋した際に1万本を超える丸太で木製の足場を組んだと言われています。残っている当時の写真を見るとぶっ飛ぶ様な足場が組まれています。まるで木で組み上げたダムに見えます。

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要はすごく難工事だったワケです。2年の歳月を費やして1917年(大正6年)に完成しました。この橋は関東大震災でもほとんど損傷を受けずに現在に至っているのです。国の登録有形文化財。

100年を超えても橋梁は大丈夫。いつも思いますが、鉄橋ってマジで長持ちしますよね〜。

追記:

このコラムは、2019年9月に書かれたものです。御存知の様に、2019年10月12日に関東から東北に上陸した大型で強力な台風19号は、関東甲信越と東北地方に甚大な災害をもたらしました。被害に遭われ亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げます。また被災された皆様にお見舞い申し上げます。

台風19号は、箱根エリアに1000ミリという途方もない量の大雨を降らせました。この雨によって路盤や橋梁などに大きな被害を受けた箱根登山鉄道は箱根湯本〜強羅間の運転ができない状態になっています。大きな被害を受けた箱根登山鉄道様にお見舞い申し上げるとともに1日も早い復旧をお祈り申し上げます。

早川橋梁を渡るとそのまま出山隧道(124.7m)。隧道内でも80パーミルの急勾配を登ります。

隧道から出ると、ちょっと勾配が緩やかになったかな。

96.6mの松山隧道内では左カーブが続き、ほぼ180度進行方向を変えることになります。

塔ノ沢駅から1.2kmで69m登って、標高222mの出山信号場。最初のスイッチ・バックをします。しかし、子供の頃から何度も箱根登山鉄道には乗っていますが、乗る度に「よく、こんな山の中で鉄道工事をしたよなぁ」と感嘆します。資材を持って来るダケでも想像を絶する苦労ですよ。旅客は喜楽に車窓を楽しんでしまいますが、箱根登山鉄道を敷設した現場の作業員が超エライです。

左側は急峻な崖、100mくらい下を国道1号が走っています。見えませんけど。

ホーム状のものは運転士さんと車掌さんがポジションを入れ換えるための通路。何故か駅名標があります。出山信号場と表示されていました。

車窓左下に、さっき通った早川橋梁と国道1号から別れた道路(塔之澤橋)が見えます。ほぼUターンしたことが分かります。

信号場の終端部、というか頭端式ですね。

信号場でスイッチ・バックし、列車は方向を転換、そのまま後方展望を撮っていきます。

ここから次の大平台駅までは後方展望になります。

【私鉄に乗ろう95】箱根登山鉄道 その6 に続きます。

(写真・記事/住田至朗)