レストラン「THE GALLEY SEAFOOD & GRILL」
開店前の様子

東急田園都市線・大井町線の二子玉川駅から徒歩数分、玉川高島屋S.C.南館6Fにロボットを活用した三笠会館グループのレストラン「THE GALLEY SEAFOOD & GRILL」がオープンしました。

シーフードやステーキなど厳選素材のグリル料理が売りのレストランですが、店舗内ではオーダースタイルのサラダバーも提供しています。新型コロナウイルス流行下において、お客さん同士がひとところに集まるビュッフェ・バイキング・サラダバーなどの提供は大変難しくなっていますが、同店は配膳をロボットにお手伝いしてもらうことで「非接触」「非対面」を維持しながらのサービス提供を可能にしました。

早速、開店前のお店にお邪魔して試してみることにしました。

タブレットで食べたい野菜をオーダーすると……
シェフがお皿に盛りつけてロボットに載せてくれます
後はロボットが届けてくれるのを待つだけ! 頭上に手をかざすとロボットは帰っていきます

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ロボット導入の経緯について、三笠会館グループでは「数年前から様々なIT技術を活用したレストランの新しいカタチを模索してきた」と言います。ロボットが出来る仕事はロボットにお願いし、スタッフにとって働きやすい環境作りに注力する。そうして生まれた余剰リソースをより「レストランらしい」仕事に割くことでサービスを充実させるのが狙いです。

そうはいってもこの自動搬送ロボット「PEANUT」は一台およそ200万円ほどで(参考価格、初期設定などで変動)、気軽に導入できるものではありません。昨今のコロナ禍による「非接触」「非対面」サービス需要の高まりが、こうした新しいテクノロジーの導入を後押しした形になったと言えるでしょう。

まだ開店間もないものの、ロボットに対するお客さんの反応は上々のようです。取材中も隣の席の家族連れが「ロボットが来たよ」と和やかなムードで食事している様子が垣間見え、子供のころにアニメで見た近未来のサービスってこんな感じだったよね……と穏やかな気持ちになれました。

天井から赤外線で位置情報を取得

自動搬送ロボットサービスを提供した株式会社QBIT Roboticsの担当者に、スペックや移動の仕組みについて伺いました。

自動搬送ロボット「PEANUT」を開発したのは、2010年に設立された中国のメーカー「KEENON ROBOTICS」。本体サイズは横500×奥行500×高さ1200㎜、総重量は60㎏。最大傾斜角度5度まで対応。「THE GALLEY SEAFOOD & GRILL」では閉店後の充電のみで翌日の営業時間中ずっと稼働し続けているそうです。

充電中のロボットたち

ロボットはPCで制作されたフロアの地図をもとに店内を移動し、各テーブルごとに指定された位置で停止するよう設定を組まれています。ソナー類を脚部に備えており人や障害物を察知して回避することも可能。位置情報は天井に貼られた位置マーカーから赤外線で取得するため、混雑した店内・暗い店舗内でも自分の位置を見失うことはありません。

ソナー類を備え、人や障害物を察知

状況に応じて様々な音声を再生でき、また座った人の目線に合うよう高さを調節して搭載されたデイスプレイには簡単な表情を表示させることも。さすがに「AIを搭載して高度な会話まで」とはいきませんが、取材中にはハッピーバースデーの歌も披露してくれました。

こうした細々とした設定は店舗側がロボットを購入しただけでは出来ません。QBIT Roboticsが店舗内の移動ルートを調査したり、天井の適切な場所に位置マーカーを貼り付けて移動ルートを設定するなどロボットが活躍するための下地を作り、運用/保守のサポートにつくことで初めて可能になります。

今回店舗に導入された2台はそれぞれ「エリザベス」「ハル」と命名されており、エントランス側をエリザベスが、反対側をハルが担当しています。現在の仕事はサラダの配膳のみですが、将来的には下膳や誕生日祝いの手伝いなども検討しているとのことでした。

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文/写真:一橋正浩