今後、恐れられている首都直下地震が起き、最悪の場合は死者2万3000人超、被害額95兆円と国が見込んでいるいま、地震に耐える家づくりに注目が集まっている。

そんななか、ポラス暮し科学研究所(ポラスグループ)が「繰り返す地震にも構造性能が低下しない耐力壁」を開発した。

その名も「Endure Wall」(エンダーウォール)。

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ひとつの壁が「復元力のある耐力壁(壁倍率4倍相当)」と「制振壁」を兼ね備えた、新しい高性能耐力壁で、ポラスグループは3月8日、同研究所内でその実装モデルと実験を公開した。

耐震と制振、次世代耐力壁「Endure Wall」の構造とは

耐震+制震の高性能耐力壁「Endure Wal」は、木質フレームの中央に、性能復元材の「KOA ダンパー」を配置したシンプル構造。

KOA ダンパーの中には高層ビルや橋梁に使われる高剛性な粘弾性体を使用し、一般的な「制振」とよばれるものより硬く高い耐力を持っている。

地震発生時には、性能復元材である KOA ダンパー部分のみが変形し、地震後には、おおよそ元の性能に戻る。また、KOA ダンパーは変形するさいに地震エネルギーを吸収できる。

この KOA ダンパーを採用した「Endure Wall」について、ポラス暮し科学研究所 構造グループ 照井清貴 課長はこう解説した。

「Endure Wall は、ビルや橋の建設に使う、固く強度のある高剛性粘弾性体を使うことで、地震に耐える耐力壁の性能を持ちながら、制振のように変形することで地震エネルギーを緩和してくれる」

「複数回の地震でも性能低下を起こしにくくし、ひとつの耐力壁で耐震と制振を担う、一歩先を行く高性能耐力壁。同社は今後、ポラスグループの注文住宅などで、ポラテックのプレカットや構造計算に応じて「Endure Wall」を組み入れていく」(照井清貴 課長)

また、この Endure Wall のコスト感については、「一般的な30坪程度の住宅にプラス30~40万円で4枚を設定できる」とも話していた。

Endure Wall 4~5枚に対し、従来耐力壁22枚も要る!

いっぽう、ポラス暮し科学研究所はこんな検証結果も明らかにした。

同研究所は、耐震等級3相当(最高レベル)の木造住宅が、地震時に家の構造へのダメージを受けないために「どのくらいの耐力壁が必要か」を検証。

同じ建物が地震で揺れたさいに、揺れ幅を半分以下にするためには、「Endure Wall」は 4~5枚で済むのに対し、従来の耐力壁で同じ性能を維持するためには、22枚もの耐力壁が必要になることがわかったという。

同研究所の照井清貴 課長は、「耐力壁が22枚もある家となると、壁だらけで空間が取れない、とても住める家にはならない。こうした点でも、繰り返される大きな地震への対策には、高性能耐力壁 Endure Wall は、コストパフォーマンスも優れ、設計やデザインの自由度も高められる」とも伝えていた。

◆ポラスグループ
https://www.polus.co.jp/