パソコンやスマートフォンなどと向き合う時間が増える現代、気づかないリスクが静かに忍び寄っている。

それが、角膜の傷リスク。

ここ数年の新しい生活様式の定着を受け、角膜に傷がつくという国民問題に警鐘を鳴らすべく、2人の眼科医が解説、そのケア方法を「現代人の角膜ケア研究室」セミナーで教えてくれた。

―――「現代人の角膜ケア研究室」セミナーでは、杏林大学医学部 眼科学 山田昌和 教授が、現代人の目の酷使環境や目の角膜ケアの重要性を、また伊藤医院眼科 有田玲子 副院長が、親子の目の酷使実態の調査結果と考察について伝えた。

さらに山田教授と有田副院長は、いますぐ実践できる「おすすめのアイケア」について解説・実演してくれた。

「現代人の角膜ケア研究室」セミナーの注目ポイントが、これ↓↓↓

◆パソコンやスマートフォンなどの情報機器(VDT:Visual Display Terminals 機器)の利用が増えるなど、生活が変化し、現代人の環境は大人も子どもも角膜の傷リスクが非常に高い。

◆親子に向けて目の酷使実態を調査した結果、大人も子どもも4人に1人は角膜の傷リスクを抱えていることが明らかに。さらに、疲れ目の不快症状やドライアイの可能性があるにもかかわらずアイケアが不十分な実態が明らかになり、角膜の傷リスクは国民的な問題といえる。

◆傷つきやすい角膜を守り、適切なアイケアを習慣的に行うことが大切。

デジタル社会の進展で増大する角膜の傷リスク

「デジタル社会の進展で増大する角膜の傷リスク~目の酷使による角膜の傷への影響とその対処法~」と題し、杏林大学医学部 眼科学 山田昌和 教授は、現代の生活スタイルの変化による角膜への影響について解説。

近年のVDT機器※利用時間は増加傾向にあり、大人も子どもも目を酷使する環境にあるとして、全世代で、目の酷使による角膜へのダメージ蓄積が進行していると懸念を示し、こう伝えた。

「目の表面にある角膜では生きた細胞がむき出しになっていて、非常に繊細です。そのため外部環境の影響を受け、傷つきやすいといわれています。さらに角膜の傷を放置すると様々な不快症状につながり、視力にも影響が出ることがあります」(山田教授)

大人も子どもも4人に1人が抱える…現代人に知ってほしい角膜の傷リスク

全世代でPC・スマホなどのVDT機器利用による目の負担が大きくなり、角膜の傷リスクが高まっている現代。

その実態把握のために、眼科医の有田副院長のもと、小学校5・6年の子どもを持つ親500人を対象にその子どもも含め、「親子の目の酷使・実態調査」を実施し、その結果を考察。

この調査から、大人も子どもも、約25%がドライアイの可能性があり、さらに、大人の7割、子どもの4割が目の疲れを感じているという結果に。

全世代でドライアイによる角膜の傷リスクが高まっている実態に注意を喚起し、こう伝えた。

「大人も子どもも4人に1人がドライアイの可能性があり、非常に多くの方が角膜の傷リスクを抱えていることが明らかになりました」(有田副院長)

さらに、アイケアの実態について、親がアイケアをしていない家庭ではその子どもの96.1%がアイケアをできていないという結果から、親子のアイケア実施に相関関係があることも伝え、目を酷使する時間が長く、角膜の傷の影響を受けやすい大人から、アイケアを積極的に行うよう呼びかけた。

「毎日の目の疲れをリセットし、角膜の傷を予防する発想が大切」

山田教授はさらに、アイケアは、毎日の目の疲れをリセットし、角膜の傷を予防する発想が大切で、疲れたときだけではなく、日ごろから習慣化することが重要という。

そこで山田教授は、目の疲れを感じていても、角膜に傷がついていると自覚していない人が多く、放置してしまう可能性を危惧し、参加者に向けて角膜の傷の可能性を確認するかんたんなチェック方法を紹介。

「寝ても疲れ目が解消しない」「常に目が乾いてショボショボする」「まぶしさを感じやすい」といった症状を感じる人は、角膜に傷がついている可能性があり、注意を促した。

目を温める、点眼薬を選ぶ、まばたきエクササイズ

また「加齢によって角膜の傷の修復機能が低下し不快症状が長引くこともあるので、継続してアイケアを行うことが大切です」という有田副院長は、具体的なアイケアを実践しながら紹介。

今日からできるアイケアについて、次の3つのポイントを教えてくれた。

◆目を温める温罨法(おんあんぽう)

・目を温めることで、角膜を覆い、涙の蒸発を防いでいる油が溶けやすくなる。

・あずきで温めるアイマスクやビニール袋に入れた蒸しタオルなどで1日2回・5分以上温めると良い。

◆点眼薬

・角膜修復機能を持つビタミンA入りのものを選ぶことが重要。

・角膜にやさしい防腐剤無添加のものもおすすめ。

・1滴で十分効果的であるため、一度に何滴もささない。また、1日の上限回数を守る。(1日3~6回)

◆まばたきエクササイズの実践

・まばたきが不完全だったり、回数が少なかったりすると、涙の水分の蒸発を防ぐ油が分泌されない。

・まばたきエクササイズで目周りの筋肉(眼輪筋)を鍛えることでまばたきを正しくできるように。

―――「現代人の角膜ケア研究室」は、近年増加しているといわれている角膜上皮障害(角膜に傷がついた状態など)から現代人の目を守るため、角膜の専門家によって構成された啓発団体。

その公式サイトでは、正しい角膜のセルフケアの方法や、角膜上皮障害の可能性が分かるチェックリストなど、角膜に関する情報を分かりやすく紹介しているから、気になる人はチェックしてみて↓↓↓。
https://www.kakumaku-lab.jp/

杏林大学医学部 眼科学 教授 日本角膜学会 理事長
日本コンタクトレンズ学会 山田昌和 理事

伊藤医院眼科副院長 日本角膜学会 有田玲子 評議員