「敦賀・若狭(嶺南)」エリアは古代から朝廷の食文化を支えてきた「御食国(みけつくに)」として長い歴史があり、若狭から京都まで海産物を運んだ「鯖街道」の起点としても知られています。2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸により、首都圏からもぐっと身近になり「食」でも注目度アップ! 定番の越前がに若狭ふぐはもちろん、JAXAの宇宙食認証を受けた高校生開発の「宇宙鯖缶」など、伝統と革新が共存する海鮮グルメが目白押しです。今回は、冬の嶺南(福井県南部)を代表する「海の幸」を解説します。

【福井県嶺南エリアの旅】
【敦賀駅編】敦賀・若狭エリアを巡る冬の福井旅 「鉄道と港のまち」敦賀はどんな街? 気動車も鉄道ジオラマもある「敦賀赤レンガ倉庫」へ https://tetsudo-ch.com/13022643.html など

小浜~京都の鯖街道を通じて根付いた「鯖」文化

熊川宿「まる志ん」で販売していた「へしこ」

かつて福井県で水揚げされた鯖は「鯖街道」を通って京都に運ばれました。その際、生の鯖は傷みやすいため、遠方へ運ぶためにさまざまな加工品が生まれました。代表格の「へしこ」は、サバを塩とぬかで漬け込んだ保存食です。
筆者は以前からへしこが好きで、小分けにして冷凍庫に常備しています。ご飯との相性がいいので、お茶漬けや炒飯の具にしてもいいですし、アンチョビのようにパスタやピザの味付けに使ったり、じゃがいもと炒めたりするのもおすすめ。そのまま食べるのはもちろん、アレンジもしやすく、意外と使い勝手のよい食材です。

「まるさん屋 敦賀駅前」の浜焼さば御膳(※2024年鉄道チャンネル撮影)

その他にも、塩抜きしたへしこと麹を合わせて発酵・熟成させた「なれずし」や、鯖を塩と酢で〆て酢飯にのせた「鯖寿司・焼き鯖寿司」、鯖を1本丸ごと串に刺して焼く「浜焼き鯖」、最近は鯖と野菜などをパンに挟んだ「サバサンド」も人気があります。

【参考】
三方五湖&日本海の絶景ポイント、江戸時代の町並みが残る日本遺産「熊川宿」、ヨーロッパへの玄関港だった敦賀など 北陸・福井の観光情報(※2024年10月掲載) https://tetsudo-ch.com/12982869.html

野口宇宙飛行士も宇宙で食べた!「若狭宇宙鯖缶」

ネーミングもイラストもインパクト抜群の「若狭宇宙鯖缶」

お土産としていただいた「若狭宇宙鯖缶」。その名の通り、JAXAから宇宙日本食として認証され、野口聡一宇宙飛行士が宇宙で実際に食べた逸品です。しかも、鯖缶を開発したのは現役の高校生だというから驚きです!
授業の一環としてスタートした缶詰づくりから始まり、小浜水産高校(現在は統合により福井県立若狭高等学校)の製造工場にHACCP(衛生管理の手法)を導入する苦労、宇宙食の認定を受けるための試行錯誤、その間には慢性的な定員割れによる廃校の危機……。紆余曲折を経て開発されたという話に「ドラマみたいな話だな」と思っていたところ、何とこの話、書籍化されていました。興味がある人は、イースト・プレス社「さばの缶づめ、宇宙へいく」をどうぞ。

原材料はノルウェー産さば、醤油、砂糖、葛でん粉のみ

実に14年の歳月をかけて誕生した「若狭宇宙鯖缶」。当初は「小浜よっぱらいサバ」(小浜市の釣姫(つるべ)漁港で、餌に酒粕を与えて育てた養殖鯖)などを使用した、1缶2,000円の高級品でした。現在はノルウェーサバを使用するなどの工夫で、購入しやすい価格に抑えているそう。宇宙空間で液体が飛び出さないよう、葛を使って粘性を出し、宇宙空間では味覚が落ちるため濃い味付けにしているところはオリジナルを再現しています。

缶から出した若狭宇宙鯖缶と調理例(石焼風ビビンパ)。鯖に味が付いているのでそのままのせるだけ。ラクに調理ができました

実際に食べてみるとあまじょっぱい味で、そのままご飯のお供にしたい味。お酒のおつまみにも良さそうです。葛の部分も違和感がなく、何も知らずに食べたら「汁の部分が煮こごり状になっているな」としか思わなかったでしょう。
筆者はツナサラダの感覚でサラダにトッピングしたり、肉そぼろを鯖に置き換えた石焼風ビビンパを作ったりしてみました。ベースの味がしっかりしているので、これだけで味が決まり、料理にアレンジしやすいですね。

鯖だけじゃない!若狭が誇る冬の「海の幸」

福井と言えば「越前がに」

今回の旅で食べたものではありませんが……写真はせいこ蟹の甲羅盛り。黄色いタグは越前がにの証です

冬の福井と言えば「越前がに」を思い浮かべる人が多いでしょう。福井県で水揚げされた雄のズワイガニのことを指し、脚に付けられた黄色いタグが本物の証。2007年からはメスのズワイガニ「せいこ蟹」にも黄色いタグが付けられるようになりました。

漁港と隣接している魚特化型のマーケット「UMIKARA」にも蟹コーナーがありました

漁期は毎年11月6日の解禁から翌年3月20日までと決められており、越前漁港や三国港、そして今回の旅で訪れた敦賀港や小浜港などで水揚げされています。ただし、せいこがにの漁期は年内で終了してしまいます。かに味噌と内子(卵巣)が食べたい人はご注意を。

日本最北のトラフグ養殖地で育った「若狭ふぐ」

「旅を奏でる ひろた」で味わったふぐ尽くしは小浜市の阿納(あの)地区で養殖したトラフグを贅沢に使用

若狭湾は、日本最北のトラフグ養殖地として知られています。ここで養殖されたトラフグ「若狭ふぐ」は1年中楽しめますが、海水温が低い時期に獲れたものが特に美味しく、毎年11~3月頃が旬です。身が引き締まり、旨味が濃縮された若狭ふぐを、てっさ(ふぐ刺)やてっちり(ふぐ鍋)、焼きふぐ、唐揚げなど様々な調理法で味わいましょう。

小浜湾が育む「若狭かき」

「旅を奏でる ひろた」で味わった牡蠣の蒸し焼き。近隣で獲れたものを宿の前に広がる海にしばらく漬けておくことで、味わいが変化するそう

小浜湾で養殖した「若狭かき」も福井の冬の味覚です。1930年頃から養殖をスタート。海岸近くの養殖いかだから稚貝を付けた貝殻を海中に吊るして育てます。波がおだやかで静かな小浜湾は、牡蠣の養殖に最適な環境。良質な牡蠣になると言います。
筆者は今回、蒸し焼きにして食べましたが、小ぶりながらプリッとした食感と凝縮された旨みが最高! シーズン中は県内の各地に牡蠣小屋が登場し、気軽に味わえます。

「UMIKARA」には地元で獲れた旬の海産物がずらり。生ものなので諦めましたが、できることなら買って帰りたかった!

この他にも、福井には美味しい海の幸がたくさんあります。今回訪れた、JR若狭高浜駅からアクセスできる「UMIKARA」や、小浜漁港卸売市場に隣接する「若狭小浜お魚センター」、JR小浜駅から徒歩圏内の「若狭フィッシャーマンズワーフ」などで飲食や購入が可能です。

匠の技が光る!「おぼろ昆布」

「おぼろや」外観。アーケード商店街にあります

うどんやそばにトッピングしたり、吸い物に入れたり、酢の物などに加えたり。家に常備しておくと何かと役立つ「おぼろ昆布」。実は敦賀は昆布加工の産地として有名で、全国の生産量の約8割を占めていると言います。そのため、敦賀駅近くにはいくつもの専門店が軒を連ねています。

「おぼろや」店内。こんぶ茶の試飲もできます

今回訪れた「おぼろや」もそのうちの一軒。敦賀駅から徒歩約12分、本町商店街にあります。お目当ては「手すきおぼろ昆布」。職人が包丁でごく薄く削り出した昆布です。事前に予約をすれば、職人になりきって昆布作りを体験することもできます。

「おぼろや」商品。筆者はせっかくなので、名工の削った「竹紙(ちくし)昆布」を購入。海苔巻きならぬ昆布巻きを作ってみましたが、口溶けの良さにびっくり!

日常的には、おぼろ昆布より安価な「とろろ昆布」を食べている人が多いのではないでしょうか。筆者もその一人ですが、昆布を何枚も重ねて機械で削るとろろ昆布に比べ、おぼろ昆布は厚みのある上質な昆布を丁寧に削ります。食べてみると味わいの違いに驚くので、是非お試しを! どこでも買えるとろろ昆布に戻れなくなってしまうかもしれませんが、とろけるような食感と繊細な味わいはクセになります。

伝統のへしこから、最新の宇宙鯖缶まで、若狭の海鮮は知れば知るほど奥が深いものばかり。北陸新幹線でアクセスが向上した今、敦賀を起点に本場の味を巡る旅は、心もお腹も満たしてくれること間違いありません。旬の旨みが凝縮された冬の福井へ、ぜひ足を運んでみてください。

文/写真:斎藤若菜

鉄道チャンネル編集部

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