平成の乗降人数伸び率上位は東京メトロ、東急、京急

東京メトロのほかJR、東武、西武の鉄道4社が集結する東京都心の巨大ターミナル・池袋駅(写真:Ryuji / PIXTA)

コラム後半は、運輸総研研究員の調査研究からポイントを絞ってご紹介します。

1995年から2017年までの会社別乗降人員の伸び率がランキング形式で報告されました。伸び率上位は、①東京メトロ、②東急電鉄、③京浜急行電鉄、④京王電鉄、⑤小田急電鉄、⑥JR東日本、⑦西武鉄道、⑧京成電鉄、⑨東武鉄道、⑩相模鉄道。

全般に東京西側の鉄道が上位なのは、多くの大学が多摩地区に立地するから。新興住宅地も多摩エリアが中心です。沿線を開発して利用増につなげるビジネスモデルは、現代も生き続けます。

JRは「駅混雑が少ない」!?

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さらに、興味深いのは鉄道会社別のイメージアンケート。利用客が対象6社にどんなイメージ(会社のカラーとも言い換えられると思います)を持つのかについて、JR東日本は「駅混雑が少ない」、東急、小田急、西武の3社は「地域の教育水準(が高い)」、東京メトロは「再開発で魅力向上」、東武は「駅や駅周辺のバリアフリー化(が進んでいる)」がトップにランクされました。

JRの駅混雑緩和は一瞬疑問にも感じたのですが、確かに湘南新宿ラインや上野東京ライン、常磐線の品川直通運転などで乗り換え回数は減少。乗換駅の混雑解消につながっているようです。今後は現在も再開発が進む渋谷、そして「新宿グランドターミナル構想」が始動した新宿に期待といったところでしょうか。

豊洲に注目?鉄道会社は進学・就職の若者や子育てファミリーのファン獲得を目指すべきか

もう一つの注目点が、メトロの「再開発で魅力向上」。コラム前半では新宿、渋谷、池袋の再開発を取り上げましたが、それより利用客が意識するのは、暮らす街として人気上昇中の豊洲かもしれません。豊洲は有楽町線の半蔵門線住吉への延伸が決まり、街の魅力がますます向上しそうです

地方から東京に転居する年代層は、進学時と就職時が圧倒的に多いそう。「充実した学びは東京の学校で」、「やりたい仕事に就けるのは東京」といったところでしょうか。

運輸総研の別の調査では、「進学・就職で東京に出てくる人は、住居を決めるのに鉄道サービスを重視する」の結果も出ています。東急、小田急、西武の「教育水準」への評価には、「鉄道会社の経営戦略は、進学・就職の若者やヤングファミリーにファンを増やすこと」のメッセージが込められているのかもしれません。

運輸総研の調査研究には、ほかにも今後の東京圏鉄道の針路を示すデータが満載。機会があれば、続報の形でご紹介させていただきたいと思います。

記事:上里夏生