タッチ決済機能付きのクレジットカード=イメージ=(写真:nevodka / PIXTA)

交通系ICカードと同じような使い心地で改札を通過できる「Visaのタッチ決済」が、日本全国のローカル私鉄・バスを中心に急拡大している。そのコスト感やインバウンドへの対応に果たす役割などから、拡大につながった理由を探る。なお、本稿ではVisaブランドのタッチ決済については「Visaのタッチ決済」、その他ブランドやタッチ決済全般に言及する際は「タッチ決済」と記載する。

2021年7月、我が家に三井住友カードから案内が届いた。「ナンバーレスのゴールドカードに切り替えませんか?」というものだ。

大学時代に作ってそれっきりのクレジットカードを更新するチャンスだ、ということで早速申し込むことにした。ほどなくやってきた新しいカードには番号が刻印されておらず、スマートフォンに入れた「Vpass」アプリでカード番号や使用履歴などが確認できる。

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この新カードにはタッチ決済の機能が付いていた。これは国際ブランドが展開する非接触型の決済機能のことで、ブランドによっては「コンタクトレス」など様々な呼称で呼ばれている。

一定以下の決済金額であれば署名する必要もないため、使用感は「Suica」「PASMO」などの交通系ICカードに近い。決済端末にかざすだけで料金の支払いが完了する。タッチ決済はそうした利便性やコロナ禍における非接触需要を武器に世界中で普及しており、とうとう我が家にもその波がやって来たというわけだ。

支払いを一箇所にまとめておきたいタイプの人間としては、これは大変ありがたかった。カードを切り替えてから1年以上経つが、コンビニやスーパーのセルフレジで大変重宝している。また首都圏の鉄道ではなかなかお目にかかることはないものの、タッチ決済は公共交通機関でも続々導入されているようで、日々交通系のニュースで報道されている。

福岡市地下鉄で「Visaのタッチ決済」を試してみた

筆者も今年9月の西九州新幹線取材のおり、福岡市地下鉄で「Visaのタッチ決済」を試す機会に恵まれた。

福岡市地下鉄では2022年5月末から実証実験を開始し、一部の駅で「交通系IC/Visaのタッチ決済」が両方利用できる一体型自動改札機を設置している。福岡空港から博多駅まで「Visaのタッチ決済」で乗車してみたところ、交通系ICカードと比べると若干のタイムラグがある気はしたものの、すんなりと改札を通ることができた。カードをタッチする場所がいつもと違うことに慣れさえすれば、戸惑うことはなさそうだ。

画像は「『福岡市地下鉄』Visaのタッチ決済による実証実験」のリリースから(2022年5月24日、三井住友カード)

ただ、福岡市地下鉄でも「Visaのタッチ決済」が使えるのは7駅にとどまる。あくまで実証実験ということで全路線に本格導入しているわけではない。JR旅客6社で最初に実証実験を始めたJR九州も、使えるのは博多含む5駅。12月5日からは新たにJCBおよびAmerican Expressのタッチ決済の実証実験を開始すると発表されてはいるものの、そちらも使用できる駅はVisaと同じ5駅に限っており、まだ手探りの段階と言える。

では、公共交通機関におけるタッチ決済は実態としてどのくらい広がっているのか――日本で最もタッチ決済の普及に力を入れているVisaに取材してみた。