プレゼンに参加したMODE 村岡正和氏。鉄道建設工事の難易度の高さを語った

「1日2~3時間しか工事ができないのは普通じゃない」――2022年11月10日、東京ミッドタウン日比谷で行われたイベント中に、そんな発言が飛び出した。

イベントはIoTソリューションサービスを提供するMODEが日本オフィス設立5周年を記念して開催したもの。DX最前線の事例やトレンドを語り、各業界の第一人者を招いて協業事例を紹介した。

同社は2014年7月、米国・シリコンバレーで設立。2017年には東京都千代田区に東京オフィスを開設している。鉄道業界では、JR東日本スタートアッププログラム2021に採択されたことでも知られる。

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両社は「工事現場の“ unknown” をなくしたい」という思いから、夜間のJR浜松町駅における夜間改良工事で実証実験を行っていた(実施期間:2022年1月~3月)。先の発言は、この実証実験の結果を発表するセミナーの中で出てきたものだ。

鉄道現場の夜間作業では、終電から始発までのわずかな時間で作業を行う場合も多く、作業時間も4時間ほどしか取れない場合が多い。作業員が100名以上入り、軌陸車が十数台以上活躍する現場もある。人力、目視に頼った安全管理では全体把握が困難だ。協業にはこれをデジタルツイン化することで作業の進捗を管理したり、作業員の安全を確保したい狙いがある。

実験では準天頂衛星対応GPSトラッカーを用い、作業員や軌陸車など「誰が・何が・今どこにいるのか」をリアルタイムに可視化した。また作業員にはセンサを着用してもらい体温や歩数を計測、鉄道工事で使用する保安機器の状況も把握できるようにした。

実証実験では、次のような結果が得られた。

「作業時間の4時間で14,000歩/人以上の活動量を確認しました。特に安全確認の注意力が特に必要な撤収作業時間帯に歩数が多くなっており、体力的にも負荷がかかりやすい時間帯であることを認識」

「約二ヶ月で、59項目の知見、12項目の課題を取得し、次のステップでの取り組みが明確に」

「アンケート結果から、80%の作業者が負担にならないと回答し、現場に負担のかからないセンシングを検証できた」

「工事関係者、軌陸車の位置をリアルタイムに把握できた」

軌陸車の位置などをリアルタイムに可視化

実際に現場に携わったMODEの村岡氏は「鉄道建設工事は他の工事と比べて非常に難易度が高いんです。 1回の工事が、終電から始発の間の2~3時間しかないため余裕がなくミスが許されない。今どこで何が行われているのかわからない状況なので、その“わからない”を“わかる”にできると何かが大きく変わると思いました。少しでもセンシングを活用して、現場に貢献できたらと、強い想いが湧いたんですよね」と当時を振り返る。

JR東日本スタートアップの吉田氏は「建設現場安全管理のためにはリアルタイム把握が最も重要なんです」とDXの必要性を伝えた。また「DXは手段でしかないので、時代に合った方法を検討していきたいです。まずはデータの取得、そして安全や品質を守りつつデータを使いこなすように、今までのやり方を抜本的に変えていきたいと思っています」と今後の展望を語った。