若い人が住みたくなる沿線イメージ

ここから、新京成がジェントルピンクに込めた思い。2023年11月開催の鉄道技術展の併催セミナー「レイルウェイデザイナーズイブニング(RDE)」で取材した、相原栄取締役・車両電気部長のスピーチを再構成して、ブランドイメージへのこだわりを探ります。

新京成の路線は京成津田沼ー松戸間26.5キロ。JR武蔵野線、東武アーバンパークラインなどと同じ、首都圏外周部を巻く環状鉄道で、東京都心には乗り入れません。沿線に目立った観光施設はなく、利用客はほぼ通勤通学客や沿線住民に限定されます。

本格化する少子高齢化社会にあって、目指すのは「若い人が住みたくなる沿線イメージ」。2014年にカーブの多い線形をモチーフにしたシンボルマークと、ジェントルピンクのコーポレートカラー、それに「まいにち、ちょっと、新しい。」のブランドスローガンを制定。4年間で156両(6両×26編成)の車両を塗り替えました。

くぬぎ山のタヌキ

歴史をたどれば、1970年代後半からの新京成のボディカラーは試行錯誤の連続。キャンディピンク地にマルーンのツートンカラーは、1980年代初頭にはベージュ地に茶帯に変わりました。

1978年から2021年まで40年以上にわたり活躍した8000形電車。最初の編成はキャンディピンクとマルーンのツートンカラーで登場しました(写真:新京成電鉄)
昭和から平成かけての標準色だったベージュ地に茶色のライン。新京成は2017年から8000形1編成をリバイバルカラーに塗り替え「くぬぎ山の狸」を表敬しました(写真:新京成電鉄)

前面2枚窓の8000形電車(現在は全車引退)は、「くぬぎ山の狸(たぬき)」なんて呼ばれたことも。くぬぎ山は、本社のある鎌ケ谷市の地名。狸とは言い得て妙で、新京成も積極的に〝狸電車〟をPRしました。

いったんは定着した茶帯ですが、8000形の2代後の8900形でステンレス車が採用されると、銀地に茶帯はどこか〝映えない〟。社内公募の青帯、2005年デビューのN800形のマルーン帯を経て、2014年からジェントルピンクの現行カラーに統一されました。

芸能人の一言が効果絶大

ピンクの新京成をめぐっては当初、「朝から落ち着かない」のクレームもありました。ところが、ある鉄道好き芸能人がテレビで「新京成の電車がかわいい」と発言して、苦情はピタリやんだーーの〝都市伝説〟は、鉄道技術展のコラムでご報告した通りです。

新年ヘッドマークをデザインした本間さんも、「かわいい」と感想を話してくれました。