EF210、EF510を増備

車両増備に関しては、中計と同時発表の「2024年度事業計画」(単年度計画)に記載されます。

車両・設備関係投資額は178億円。電気機関車(EL)は、EF210-300番台やEF510-300番台を増備します。直流機のEF210は山陽線など、交直両用のEF510は交流電化の九州地区中心に、それぞれ運用します。

車両改造で注目したいのが、東北エリアを走るEH500形の日本海縦貫線対応への改造(一部施工済み)。考え方は中計で挙げたう回ルートに共通しますが、北海道・東北から関東などへの貨物列車は通常、太平洋ラインを走行します。万一の自然災害時に日本海ラインを経由できるようにして対応力を強化します。

2024年度の設備投資計画。維持・更新関連の投資額が成長・戦略投資額をやや上回ります(資料:JR貨物グループ2024年度事業計画)

貨物新幹線は車体と荷役システムの開発がカギ

ラストは、ファンの皆さまの関心が高い貨物新幹線。本サイトでは2023年2月以来、約1年2ヵ月ぶりの登場です。

中計には、「新技術の推進」の項目で「電車型貨物列車の開発検討」、「新幹線による貨物鉄道輸送」が登場しますが、直接の貨物新幹線は登場しません。しかし、鉄道関係のセミナーなどでは会社としての考え方を披露する場面もあるようです。

現状は、前回コラムと同じくあくまで構想段階といったところ。JR貨物は貨物新幹線実現のポイントを、①旅客新幹線をベースにした貨物用車体の開発、②スムーズな荷役システムの構築ーーの2点に集約します。

非常に大ざっぱな話で恐縮ですが、貨物新幹線は旅客新幹線に比べて重量が重くなるため、高速化が求められる新幹線ネットワークとは相反します。積載量確保と高速走行のバランスをどう取るのかを考えます。

荷役システムは、現在のフレートライナーのようにフォークリフトでパレット(貨物を積載する台)を1個ずつ積み卸すスタイルはいかにも非効率。短時間で一気に積載・取り卸しできるシステムが求められます。

残念なことに、今回も「貨物新幹線が実現に向けて一歩前進」の情報はお届けできないのですが、それでもこの話題が求められるのは、「未来に向けた貨物鉄道の展望を新幹線で切り開きたい」のJR貨物、ファン双方の思いがあるからです。

鉄道ファン・貨物ファンなら、貨物新幹線に関心を持ち続け、エールを送りましょう。

記事:上里夏生