会場に展示されたソラリスの「ミミズ型管内走行ロボット」。工場配管などに入り込み、管内の点検や簡易清掃を行う。人力での点検・清掃が難しい古い配管は駅施設にも多く、鉄道に限らず様々な分野で注目を集めそうだ

JR東日本グループがベンチャー企業などと組み、協業により新たなビジネスを創造していく「JR東日本スタートアッププログラム」。

2017年から始まった事業共創の取り組みが今年で10回目を迎えることを記念し、リアルイベント「JR EAST STARTUP DAY」が開催された。会場はJR新宿駅 NEWoMan新宿5F LUMINE 0(ルミネゼロ)と新宿駅新南改札外のSuicaのペンギン広場で、26日が最終日となる。

会場は3つのエリアに分かれており、ルミネゼロでは壇上で起業家のプレゼンやトークショーなどを行う「PITCH STAGE」、様々なアイデア・技術を結集して練り上げられた事業共創の展示・紹介を行う「EXHIBITION」、Suicaのペンギン広場では地域発の特産品を揃え販売する「PARK」が展開される。

25日のステージイベントに登壇したJR東日本スタートアップ 柴田裕社長によれば、これまでの応募総数は1507件にのぼるという。137の実証実験を経て、66件が実用化された。その蓄積を公開するのが「EXIBITION」だ。高輪ゲートウェイ駅構内の無人コンビニに始まり、省人化・無人決済店舗システムを提供する「TOUCH TO GO」、JR青梅線沿線で無人駅の駅舎や沿線集落の空き家を活用して地域活性化を図る「沿線まるごとホテル」など注目の企業も出展した。

このほかにも、駅施設や工場などの配管を点検・簡易清掃できるミミズ型の管内走行ロボットを披露した「ソラリス」、光や音の波動制御技術を吸音材やリアルタイム字幕・翻訳ディスプレイへ活かす「ピクシーダストテクノロジーズ」、AIソリューションで社会基盤とサプライチェーン全体の最適化を掲げる「ALGO ARTIS」など、社会課題に向き合う製品や技術力をアピールする企業が並んだ。

約100ヵ国語に対応し、ディスプレイに同時通訳を表示する「VUEVO Display」(ピクシーダストテクノロジーズ)。東武鉄道の浅草駅など外国人観光客が多い場所で実証実験を行っている

Suicaのペンギン広場では海鮮弁当やクラフトサケ、燕三条エリアの特産品などが販売され賑わいを見せた。鉄道ファンの注目を集めるのがAgnavi。同社は日本酒ブランド「ICHI-GO-CAN」を展開しており、鉄道車両をデザインした商品もラインナップされている。

全国のお酒を1合180mlサイズで楽しめるAgnaviの「ICHI-GO-CAN」。ラベルに鉄道車両をデザインした商品も多く、E8系新幹線デザイン缶は取材時点で売り切れていた

【参考】JR東日本スタートアッププログラム2024年春

26日午後にはJR東日本スタートアッププログラム2024年春の採択企業によるプレゼンテーションが予定されている。

今回は「地域共創」「デジタル共創」「地球共創(SDGs)」の3つをテーマに2024年4月から参加企業を募り、合計154件の提案のなかから10件が採択された。26日午後の「PITCH STAGE」にて採択企業による協業内容の発表を行うDEMO DAYを開催し、優れた提案に対して総合グランプリの「スタートアップ⼤賞」「優秀賞」を決定する。

2024春の採択企業は、株式会社イナック、SOCIALPORT(ソーシャルポート)株式会社、合同会社本庄デパートメント、株式会社アイ・ロボティクス、SAKIYA(サキヤ)株式会社、株式会社TriOrb(トライオーブ)、株式会社ベクトロジー、株式会社Malme(マルメ)、株式会社AgeWellJapan(エイジウェルジャパン)、株式会社フォルテ。

記事:一橋正浩

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