
ANA(全日本空輸)およびANAホールディングスは、現在東京都港区の汐留シティセンターに構える本社機能を、2030年春をめどに東京駅前の超高層複合ビル「YAESU CORE(ヤエスコア)」へ移転すると発表しました。同社にとって汐留からの本社移転は約27年ぶりとなります。
八重洲ブックセンター本店跡地を中心とする約227mの新ビルへメイン拠点を構えるほか、グループの一部機能は「田町駅西口駅前地区開発事業」で建設される新ビルへ分散配置される計画です。
創業時の「日本ヘリコプター輸送」から続く本社遍歴や移転の狙い、そして巨大バスターミナルや劇場を備える「YAESU CORE」の情報もに関してもご紹介します。
本社移転の狙いは?
現在、ANAやANAホールディングの本社は、汐留シティセンターにあります。今回の移転に関して、ANAグループが目的に挙げているのは、職場環境の見直しです。新しいオフィスでは、広いフロアで社員が日常的に顔を合わせ、部署や役職を越えて話し合いやすくする考えです。

ANAグループは2026~28年度の中期経営戦略で、社員の育成やデジタル技術の活用を進める方針を示していますが、本社移転もその取り組みの一つです。社員それぞれの知識やアイデアを、組織の仕事に生かせる環境を整えるとしています。八重洲や田町への移転に関しては、両社とも同じ時期を予定し、他のグループ会社や部門ごとの配置は今後詰めるとしています。
ここでANAの歴史を!「NH」に残る昔の社名とは?
ここでANAの歴史を少死後紹介します。
ANAの前身は、1952年に誕生した「日本ヘリコプター輸送」です。通称は「日ペリ」で、役員12人、従業員16人の合わせて28人で発足しました。事業の出発点は、小さなヘリコプター2機でした。同社によると、創業時は資金が限られ、旅客機よりも安価なヘリコプターで事業を始めたということです。
現在もANAの便名に使われる航空会社コード「NH」は、この日本ヘリコプター輸送に由来します。なぜ”AN”なのに”NH”と思われていた方も、これで解説ですね。
日ペリは1953年12月、東京~大阪間で貨物や郵便を運ぶ定期便の運航を開始。翌54年2月には、同区間で旅客輸送も始めました。57年12月に社名を全日本空輸へ変更し、58年3月には極東航空と合併しています。
その後、ANAは国内外へ路線を広げました。1986年には成田~グアム線で国際線の定期運航を開始。2013年4月には持ち株会社制へ移り、ANAホールディングスがグループ全体の経営を担う形になりました。
創業期の新橋から霞が関、羽田…本社も移ってきた
創業期の日本ヘリコプター輸送は、東京・新橋の「飛行館ビル」に本社を置いていました。全日本空輸が編さんした社史には、この飛行館ビルと、1968年に霞が関ビルへ本社を移した記録が残っています。飛行館があった場所は、現在の航空会館の敷地です。
1998年には、経営再建計画の一環として本社機能を羽田空港内へ移しました。移転先は、東京モノレールの新整備場駅に近いユーティリティセンタービル。同年11月24日から、新しい所在地で業務を始める計画でした。
この時期、本社とは別に販売部門の移転も進みました。1998年12月14日、霞が関ビルと東京駅八重洲口のヤンマービルに分かれていた販売本部を、品川インターシティに集約しています。
現在の汐留シティセンターへ本社を移したのは、2003年3月17日です。ANAは当時、羽田の本社と品川の販売部門、グループ各社を同じビルに集め、経営や営業の連携を強めると説明していました。今回の計画どおり2030年春に移れば、汐留からは約27年ぶりの本社移転となります。
今回移転をする東京駅前の八重洲は、かつて販売の拠点を置いていたというつながりもあります。

ANAの直近決算、第1四半期の売上高は6727億円と好調
ANAホールディングスが7月29日にまとめた2027年3月期第1四半期、2026年4~6月の連結決算では、売上高は前年同期比22.6%増の6727億円でした。第1四半期として過去最高を更新しています。一方、営業利益は43.5%減の207億円となりました。
同社によると、国際線では訪日客や日本から海外へ向かう旅行客の需要を取り込み、旅客収入が増えました。貨物も半導体関連の輸送需要などが伸びています。日本貨物航空を連結子会社にした効果も加わりましたが、燃油費を中心に費用が増え、営業利益を押し下げました。
5年間で2兆7000億円を航空機とデジタルに投資、2030年度に営業益3100億円を目指す
ANAグループは2026年1月にまとめた経営計画で、航空機やデジタル分野を中心に、5年間で2兆7000億円を投資する方針を示しています。国際旅客や貨物などに全体の約半分を振り向け、デジタル分野には約1割の2700億円を投じる計画です。
同グループが事業拡大の節目と捉えているのは、2029年に予定される成田空港の拡張です。28年までは羽田便の拡充を優先し、29年以降は成田からの北米線やアジア線を増強する方針です。
国内線では、2028年度以降にエンブラエルE190-E2型機などを導入します。路線ごとの利用者数に合う大きさの機材を使い、収益性を改善する考えです。グループ全体の営業利益は、2030年度に3100億円を目指しています。
老舗書店があった東京駅「八重洲」にできる「YAESU CORE」
ANAとANAホールディングスが移転する「YAESU CORE」(ヤエス コア)は、八重洲ブックセンター本店などがあった街区で建設されています。同書店は1978年9月18日に開店。東京駅前で44年間営業し、街区の再開発に伴って2023年3月31日に営業を終えました。

今回の事業は、既存のビル1棟を改装するものではなく、約2.2ヘクタールの街区を一体的に整えるという再開発です。
東京都によると、この地区について、東京駅に近い一方で敷地が細かく分かれ、建物の老朽化などの課題を抱えていたとしています。このため、再開発組合は土地をまとめ、道路に囲まれた街区の形を見直します。
交通機関を乗り継ぎやすくすることや、災害への対応力を高めることも、事業の目的に挙げています。都市計画は2017年9月に決まり、建物の工事は2024年8月に始まりました。
書店の新店に劇場 ホテルや学校も
新しくできる「YAESU CORE」は地上43階、地下3階、高さ約227メートルの複合施設です。建物の完成は2029年1月末を予定しています。

オフィスは11~38階に設け、1フロアの面積は約6300平方メートルを超える計画です。地下1階~地上3階には約50店舗が入り、東京ミッドタウン八重洲と地上・地下でつながります。八重洲ブックセンターも、新しい店舗の出店を計画しています。
3~6階には、約1300席の劇場を整備します。梅田芸術劇場が運営し、ミュージカルや演劇、コンサートなどを上演する予定です。高層階には1泊から長期滞在まで対応する宿泊施設が入り、低層階には体育館やプールなどを備えたインターナショナルスクールも誘致します。

東京駅から京橋へ歩ける通路も整備
再開発組合などは、建物の整備と併せて、駅や周辺施設をつなぐ通路もつくります。地下では東京ミッドタウン八重洲や八重洲地下街、京橋エドグランなどとつながり、東京駅と東京メトロ銀座線の京橋駅を行き来する歩行者の経路を整える計画です。
地下に設けるバス乗降場は7カ所。「バスターミナル東京八重洲」は、東京ミッドタウン八重洲、TOFROM YAESU、YAESU COREの3地区にまたがる施設で、全体では20カ所の乗降場を備える予定です。新幹線や在来線、地下鉄から高速バスへ乗り継ぐ拠点として整えます。
災害への備えも、建て替えに合わせて強化します。隣接する東京ミッドタウン八重洲とエネルギーを融通する仕組みや、非常用発電機を整備。再開発組合などは、企業が災害時にも仕事を続けられるようにするとともに、帰宅困難者の受け入れにも対応する計画です。
一部機能は、田町駅前の森永ビル老朽化を機に建て替えが進む新ビルへ
ANAグループの一部機能が移る田町駅西口でも、昭和に建てられたビルの更新が進んでいます。新拠点となるのは、森永プラザビル跡地を中心とする「田町駅西口駅前地区開発事業」で開発される建物です。
ここにあった森永プラザビルは1974年に完成た建物でした。森永乳業は築48年となった2022年5月に、老朽化に伴って同じ場所で建て替えることを決め、環境性能を高めることや、地域との共生にも配慮する再開発を進めることとなりました。

新しいビルは地上24階、地下2階、高さ約125メートル。オフィスや商業施設、産業支援施設を備えます。三井不動産、森永乳業、JR東日本が事業を進め、2025年10月1日に着工しました。
JR田町駅前の広場は約2.5倍に、田町駅と三田駅の行き来も改善される
3社はビルの建て替えに合わせ、駅前の交通広場を約1200平方メートルから約3000平方メートルへ広げます。歩道を拡幅し、バスやタクシーの乗降場を広場内に引き込む計画です。
あわせて、JR田町駅の東西自由通路も広げられ、駅前には約2000平方メートルのデッキ広場も整備されます。
地下では、都営地下鉄三田駅につながるバリアフリーの通路が新設されます。通勤時間帯の混雑を和らげ、駅と街を行き来しやすくする狙いです。
田町の建物は2029年3月末に完成する予定です。その後、緑地広場などを整える第2期工事を進め、全体の完成は2033年度を見込んでいます。ANAグループの一部機能は、建物完成後の2030年春ごろに入居する計画です。
(画像:PIXTA、三井不動産)
鉄道チャンネル編集部
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