地下鉄や道路・鉄道トンネルなどの地下コンクリート構造物は、地下水の水圧が作用し、経年劣化した構造体にひび割れなどが生じると、漏水の原因になる。

清水建設と、防水・止水工事の施工会社などで構成するピングラウト協議会は、地下のコンクリート構造物に生じた漏水を短時間で確実に止水できる触媒添加型ポリウレタン系止水材「NLクイック」を開発。防水材メーカーのダイフレックスの技術協力を得て実用化へ。

NLクイックは、加水反応型ポリウレタン樹脂に専用触媒を添加した止水材で、触媒量に応じて反応時間を制御できる。

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触媒を2%(標準)添加したNLクイックの発泡完了時間は、温度23度の環境条件下で約3分。従来の加水反応型止水材の1/7程度。

NLクイックの開発で、現場の漏水状況に応じた止水材の使い分けが可能に。止水工事の生産性の向上が期待できる。

今後、ピングラウト協議会会員企業が手がける防水・止水工事への展開・普及をすすめ、インフラ構造物の長寿命化を図る。

スマート止水工法よりも短時間

清水建設とピングラウト協議会は2005年、地下の厚壁コンクリート構造物の漏水対策技術として、補修跡を目立たせず確実に止水できる高圧注入方式の「スマート止水工法」を共同開発。実工事への展開・普及をすすめてきた。

この工法は、構造物の壁厚の中心を越える位置まで削孔した直径10mm程度の穴から加水反応型ポリウレタン系止水材を高圧注入する。

この止水材は、水と反応してゆっくりと発泡・膨張しながら、微細なひび割れの深部まで浸透し、反応終了後に堅固な発泡体となり、恒久的な止水効果を発揮。

いっぽうで、止水材の加水反応は緩やかに進行するため、漏水量が多い現場で求められる迅速な止水処置への対応が難しいという課題があった。

そこで、清水建設とピングラウト協議会は、同工法に適用する新たな止水材として、触媒の作用により短時間で発泡硬化に至る触媒添加型ポリウレタン系止水材「NLクイック」を開発。