後方展望。と言われても静止画ですから単線の場合は前面展望にも見えてしまいます。左下の線路から出山信号場に入って、スイッチ・バックして右の方に登ってきました。箱根湯本行に乗って前面展望を撮っても同じ写真になります。

80パーミルの勾配が1.3km続きます。80パーミルは日本の粘着式鉄道では最も急な勾配です。角度で言えば約4.6度。登りも車両的にタイヘンですが、下りもタイヘン。速度制限も80パーミルの下りは25km/hとなっています。建設前には視察したスイスのベルニナ鉄道のブレーキ試験結果などが参照されました。というかよく車輪が滑らないもんだと感心します。

嵐山隧道(236.5m)に入ります。

ADVERTISEMENT

嵐山隧道を出るとすぐに鐘山隧道(89.5m)。

鐘山隧道を出て、鉄橋を渡ります。建設に7年以上の歳月が必要だったことが納得できます。

ここも勾配がきついですね。80‰というと、枕木の上に置いたレールが固定しないと滑り落ちてしまうと言います。軌間が標準軌(1,435mm)なのも急勾配を登るモーターが狭軌(1,067mm)の幅には収まらなかったからでした。この軌間は小田急と相互乗り入れの際に問題になりました。箱根登山鉄道は狭軌では勾配用の強力なモーターが搭載できないので不可でしたし、小田急を改軌するには路線延長が長く車両数も膨大になるために不可。ということで先に見た様に三線軌条が導入されたのでした。

常磐山隧道(167.0m)に入りました。手前にも橋梁があります。ホントにトンネルと鉄橋の連続。鉄道模型で再現してみたくなります。すごいレイアウトになりそうですよね。

常磐山隧道を出ると上から降りてくる古い石段があります。

橋梁を渡るとすぐに102,6mの畑山隧道です。石段を降りてきてもトンネルと鉄橋以外は何もありません。鉄道開通以前に造られた石段なのでしょうか。航空写真で探してみましたがよく分からず、謎のままです。

畑山隧道を出て、また80パーミルの勾配。なにしろ箱根湯本駅から強羅駅までの8.9kmのうち、半分近い4.2kmが勾配80パーミルなのです。箱根湯本駅と強羅駅の高低差445m、勾配を平均しても50パーミル。半端ない!

次の大平台駅でまたスイッチ・バックして今度は前面展望に戻ります。急勾配の後方展望は意外にスリリングです。前面展望の方が良いなぁ。

【私鉄に乗ろう95】箱根登山鉄道 その7 に続きます。

追記:

このコラムは、2019年9月に書かれたものです。御存知の様に、2019年10月12日に関東から東北に上陸した大型で強力な台風19号は、関東甲信越と東北地方に甚大な災害をもたらしました。台風によって亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災された皆様にお見舞い申し上げます。

また台風19号は箱根登山鉄道にも甚大な被害をもたらしました。箱根周辺では、1,000ミリを越える途方もない雨量が記録されたのです。ニュース映像などを見る限りでは路盤や橋梁などの被害は凄まじい状態です。長い歴史と風雪に耐えてきた箱根登山鉄道が箱根湯本駅と強羅駅間で運休という事態になっています。

今回の台風被害では、宮ノ下~小涌谷間で23mも線路が押し流されたり、崩落した土石が線路を埋めている区間、橋梁流失など20ヵ所以上などのニュースが流されています。

事態はなお流動的ですが、被害に遭われた箱根登山鉄道にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧を心からお祈りいたします。

また復旧などの情報も随時。お知らせいたします。

(写真・記事/住田至朗)