札幌市の路面電車は一日平均2万4千人を輸送しています。2015年にサイドリザベーション方式を採用した都市線(西4丁目~ススキノ)が開通したことで利便性が向上し、乗者数が増えています。ゴールが近づいてきました。短い旅を締めくくりましょう。

眠らない繁華街への入り口「すすきの停留場(SC23)」

資生館小学校前停留場を出発した市電は、かつての終着駅「すすきの」を目指します。所要時間わずか2分でおなじみのニッカウヰスキーの看板が見えてきました。

すすきのは札幌の歴史と共に発展した

すすきの停留場は、1918年に札幌電気軌道停公線の「薄野交番前停留場」として開業しました。北日本最大の繁華街すすきのの玄関口であるとともに、「日本最東端の電停」という地味な称号も持ち合わせています。

道内随一の幹線「国道36号線」を横切る

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すすきのが繁華街として発展したのは、明治の開拓時代に請負人・大工・職人・人夫らのために飲食店が増え始め、彼らを引き留めておくために遊廓が出来たのが始まりと言われています。大正時代には経済が発展し、遊廓が菊水など少し離れた場所に移転。代わって大きな料亭ができると、政界や財界から人が集まるようになり、飲食を楽しみながら政商談が盛んに行われるようになったと言われています。

実は「すすきの」という地名は存在しない

すすきのは“眠らない街”と呼ばれ、夜の人口は約8万人を誇ります。宵越しに若い女性ばかりで飲み明かしても安全という全国でも希な歓楽街です。なお、「すすきの」は正式な地名ではなく、地図に記載されていません。記載も「すすきの」でも「ススキノ」でも「薄野」でもOKという不思議な街です。

新ルート「都心線」を走行中

すすきの停留場を出発した市電は、新しく誕生した「狸小路停留場」に向かいます。これまでの路線は道路の中央を通っていましたが、ここから西4丁目までは道路の端を通るサイドリザベーション方式が採用されています。

2015年開業「狸小路停留場(SC24)」

老舗と最先端が入り混じる狸小路商店街

狸小路商店街は7ブロック総延長約900m・店舗数約200軒の全蓋アーケードを持つ北海道で最古の商店街です。1869年に明治政府が「北海道開拓使」を札幌に置いた頃、現在の狸小路2丁目・3丁目あたりに商家や飲食店が建ち並び始め、1873年頃にはその一角が「狸小路」と呼ばれるようになりました。

アーケード内にはタヌキを祭った神社がある

狸小路の由来は、「実際にタヌキが生息していた」という説のほか、「言葉巧みに近くに繁華街(現在のススキノ)に男を誘った女性たちをタヌキになぞらえた」というセクシーな説もあります。今や声をかけてくるのはティッシュ配りかカラオケ店員くらいなもの。当時の面影はどこにも残っていません。

週末・祝日は「どサンこパス」がお得

市民の足として愛されている

市電は約9㎞を一周して西4丁目に戻ってきました。1時間ほどの旅はここで終了です。全国で活躍していた路面電車ですが、交通事情の変化により多くが姿を消してしまいました。かつて札幌市電も存廃が検討されましたが、現在はルートの延長も検討されるなど積極的に活用する方針が打ち出されています。土曜日・日曜日・祝日及び年末年始(12月29日から1月3日まで)は、市電乗り放題の「どサンこパス」が販売されています。チャンスがあれば市電の楽しさに触れてみてください。

文/写真:吉田匡和