令和二年版地下鉄入門書?『地下鉄の駅はものすごい』を読んでみた

2020.06.19

2020(令和2)年5月、鉄道ジャーナリストである渡部史絵さんの新刊『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社新書)が刊行されました。

「虎ノ門ヒルズ駅」も出来たことですしそろそろ地下鉄も履修しておきたいね……という気持ちで買ったのですが、地下鉄を理解する入門書として手頃な一冊だったので紹介します。

本書で扱われている主な路線は東京メトロ・都営地下鉄。路線が誕生した歴史的経緯や駅の機能・デザイン面の解説を、図版をたっぷり交えつつ新書版250ページほどで展開しています。最初に開削工法やシールド工法の説明があり、東洋初の地下鉄となった銀座線の開業から始まるため、日本における地下鉄の入り口からゆっくりと入っていける構成になっている、と言ってもいいでしょう。

各分野について専門的に解説していく本ではありませんが、建設・工事から現在の姿に至るまでの主要なトピックスを広く抑えています。大深度での溜池山王駅の建設、ホームドアに「フルスクリーン」タイプを採用した南北線の先進性などに触れられており、同じ東京の地下鉄でもどうしてこんなに違いがあるの?といった疑問解消の一助となるでしょう。

たとえば大江戸線の「勝どき駅」――「鉄道チャンネル」でもたまに取り上げているのですが……

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普段から経済紙を読んでいたり鉄道分野や公共交通に詳しい人なら「ふむ」と一言で流しちゃうようなニュースですが、大江戸線を使わない・鉄道にもそこまで詳しいわけではないという方にとっては「なんで勝どき駅は頻繁に工事してるの?」というそもそもの経緯が分からなくて、上記のようなニュースを読んでもぴんと来ない、なんてこともあるはず。『地下鉄の駅はものすごい』では勝どき駅についても取り上げられているので、一読すればそうしたニュースの「点」を「線」で結べるようになるでしょう。

もちろん、ついこの間暫定開業した「虎ノ門ヒルズ駅」も取り上げられています。どうして「虎ノ門ヒルズ駅」が新設されるようになったのか、この駅の地下広場に取り入れられる地下鉄の駅としての初めての試みは? といった点に触れ、その意義について解説されています(なお、地下広場に「あるもの」を取り入れる試みについては、仙台市地下鉄南北線でも計画されていましたが、実現には至りませんでした)。

通読してみた感想としては、本書はディープな鉄向けでこそないものの、普段から通勤で地下鉄を使っている人、地下鉄になんとなく興味がある人、上司に「虎ノ門ヒルズ駅ってなんで出来たの?」と無茶振りされたときに切り抜ける方法を知りたい人などにおススメの一冊と言えるでしょう。また鉄道駅におけるデザインについては赤瀬達三さんの『駅をデザインする』(ちくま新書)という本があり、こちらもおすすめです。同書は2020年6月20日までKindle版セール販売を実施中(詳細は「筑摩書房 創業80周年フェア」参照)。

文/写真:一橋正浩


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