鬼ヶ沢橋梁1

とにかく仙人峠が難所だった。仙人峠と陸中大橋の間には約300mもの高低差があるのだ。ここを鉄道が越えたのが1950年(昭和25年)、1936年(昭和11年)に着工されてから太平洋戦争で中断したとは言え14年後のことだ。

列車は第6歌貝トンネル(477m)を出ると鬼ヶ沢橋梁を渡る。総延長105m、地上から54mのトラス橋。釜石線では最も高い鉄橋らしい。
鬼ヶ沢橋梁2

この段階で列車は北上している。正面に見える山塊の中を2つのトンネル(第1大橋トンネル、第2大橋トンネル)でΩのループを描いて180度方向転換をするのだ。右下には方向転換した後、陸中大橋駅を出て釜石に向かって南下する線路が見えている。この後、あそこを通ることになる。

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つまりこの部分で釜石線は平行しているという極めて不思議な線形なのだ。おそらくJR線で同じ終端に向かう線路が並行していて同じ列車が逆方向に走るというのはここだけではないだろうか。

第2大橋トンネルを抜けると列車は南に向かっており、陸中大橋駅がある。
陸中大橋1

陸中大橋駅を出てしばらく行くと右上に先程、正反対の方向で渡った鬼ヶ沢橋梁が見える。
鬼ヶ沢橋梁3

Ωループ自体は写せないのだが、これで線路の方角が正反対になること、その高低差が分っていただけるだろうか。

実は全てのトンネル(土倉、唄貝1〜6、大橋1〜2)の入り口も撮影したのだが、並べて見ても些か退屈なだけなのだ。

ここに筆者が釜石線の花巻〜釜石間を細かく記録したブログがあり、全てのトンネルとΩループの記録もあるので、興味があればご覧ください。

https://boocequai.exblog.jp/23608696/

どうすればΩループの迫力をお伝えすることができるのだろう、難しい。

余談だが、2016年11月下旬にこれらの写真を撮った。その時、陸中大橋駅で交換待ちをしたのだが、山の中から猟銃の音が聞こえてくるのだ。運転士さんに尋ねたら「イノシシを撃っている」とのこと。これが粉雪の舞う静寂の中で、殺生をしてるにも関わらず、どこかしら長閑で不思議な風情だった。

※写真は全て筆者撮影のものです