9月上旬、東京から日帰りで新潟県魚沼に仕事で出掛けました。乗車する鉄道は通常、東京から越後湯沢まで上越新幹線、在来線の上越線に乗り換えですが、今回は鉄道チャンネルにレポートを書ければと、無謀にも(笑)在来線を利用しました。乗車時間片道約5時間。スーツ姿が目立つ新幹線と違い、車内には沿線の人たちの日常があふれていました。本稿はレポートと共に、車内で感じたことを〈 〉で挿入しました。

東北線、高崎線、上越線を乗り継ぐ

上野駅に停車中の高崎線始発列車。朝5時過ぎはまだ日の出前です。

東京から新潟方面に向かう在来線は、東京から大宮までが東北線(東北本線)、大宮から高崎までが高崎線、高崎から(長岡の一駅手前の)宮内までが上越線と線区が分かれます。湘南新宿ラインや上野東京ラインの開業で、日中時間帯は東海道線からの直通列車も多いのですが、早朝は上野発高崎行きに乗車することになります。

私が利用したのは5時13分発の始発電車。E233系(E231系のことも)10両編成。真ん中に2階建てグリーン車2両を挟んだ、首都圏のJR線では最も頻繁に見掛ける車両です。上野からの乗客はほとんどいません。この電車に乗るには上野に5時ちょっと過ぎに到着しなければならず、私鉄だと一番電車でもほぼ間に合わない。前泊するくらいなら新幹線で行った方が安くて早いのです。

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〈コロナで鉄道事業者の経営が悪化して、最終電車の繰り上げや始発電車の繰り下げが取りざたされています。鉄道に長年携わった者として理解できる面は多々ありますが、実は早朝や深夜の電車には、清掃の方とか、市場への買出しとか、仕事が深夜に及ぶとか相応の需要があるんです。始発を繰り下げると、早朝出勤の方が働きにくくなる可能性もあります。社会全体で働き方改革を進めないと鉄道会社の一人相撲になってしまう場合もあるわけで、事前に十分な理解を得る取り組みが欠かせないといえるでしょう〉

大宮発車、車内が通学生で混み合ってくる

高崎駅に到着した列車は品川行きとして直ちに折り返します。朝ラッシュが始まります。

乗客が増えだすのは大宮を過ぎてからです。高崎線には上尾、鴻巣、熊谷と東京の衛星都市が並び、今回は高崎への逆通勤ルートですが、埼玉県北部の会社や学校に向かう通勤通学客で車内は混み始めます。学生はスポーツバッグ姿が目立ちます。おそらく朝練があるのでしょう。

6時55分高崎着。高崎からのJR線は上越線、信越線、両毛線、さらには上越線渋川で分岐する吾妻線と枝分かれします。高崎線の到着を待って各線の列車が次々と発車します。次に乗車する上越線高崎発水上行きは7時11分発。10分少々時間があったので、名物の「だるま弁当」とお茶で朝食としました。

高崎駅で発車を待つ211系電車。E231系、E233系、E235系といったJR発足後の車両に比べると、鉄道車両らしさを感じさせるデザインといえそうな気も。

高崎駅から乗車したのは211系4両編成で、この電車に乗るのも在来線利用目的の一つです。国鉄とJRにまたがって1985年から1991年まで製造。車体はステンレス製で、20年ぐらい前は東京駅や上野駅でいくらでも見られましたが、いつの間にか東京都心から姿を消しました。言葉では説明できませんが、例えば最新のE235系に比べると〝鉄道車両らしさ〟が感じられるような気もします。昔、さんざんこの電車で仕事先に向かったせいでしょうか。

鉄道サイト情報によると、上越線211系は2016年と比較的最近のリニューアル車。ドア足元に滑り止めを付け、ドアの開閉を手動からボタン式に変更して、利用者の利便性や安全性を向上させたそうです。運用線区は上越線のほか両毛、信越、吾妻と高崎で分かれる各線区。まだ当分は活躍が見られそうです。

高崎からの車内は通学生一色です。大人はマイカー通勤なのでしょう。学生は渋川、沼田と学校のある中心駅で一斉降車するので、一気に空きます。沼田から先の乗客で目立つのは大きなリュックを背負ったトレッキング客。多くの登山客を魅了した谷川岳は、上越線土合駅が入り口。ネットによると、登山客の足となる谷川岳ロープウェイはコロナの影響で一時運休もありましたが、今は運転を再開しているようです。

〈通学客と登山客――。「画竜点睛を欠く」ではありませんが、車内を見渡して、一つ足りないものがあると感じました。それは観光客。伊香保、水上、湯檜曽と上越線沿線は〝温泉王国・群馬〟の名に違わない名湯の宝庫です。やはりコロナ、そして「Go To トラベル」キャンペーン東京除外の影響があるのでしょうか。キャンペーンは10月1日から東京発着の旅行が追加されるようですが、通学客、登山客、登山客で車内がにぎわう風景が戻るよう、一刻も早いコロナ収束に思いをはせました〉

水上からは最新のE129系で

水上駅では長岡行きE129系と並びます。

水上からまたまた車両が変わり、首都圏で見掛けないE129系電車が長岡までつなぎます。営業運転開始は2014年で211系とは実に30年近い開きが。車内はE231系やE233系に近く、片側3ドア(E231系などは4ドア)で2両編成という点を除けば、東京の電車に乗っているのかと錯覚してしまいます。

今回の目的地は北越急行ほくほく線で行く十日町。群馬、新潟県境の清水トンネルを抜けて越後湯沢で下車し、ほくほく線ホーム(越後湯沢―六日町間はJR上越線乗り入れ)で待つ超快速「スノーラビット」に乗り換えました。

越後湯沢から乗車したほくほく線のHK100形。超快速「スノーラビット」は最高時速110kmを出す俊足ランナーです。ほくほく線のレポートは次の機会に。

〈東京から新潟へは今もJRの在来線を乗り継いで行けます。上越新幹線が国鉄時代の1982年に開業したためで、仮に現在の開業であれば、乗客の少ない区間は並行在来線として第三セクターに経営分離されたかもしれません。ただ運営主体がどこでも、鉄道が地域のかけがえない生活手段であることは変わりません。魚沼の穀倉地帯を走る列車に揺られながら、「この鉄路の歴史がいつまでも続いてほしい」と改めて感じました〉

文/写真:上里夏生

2020年9月22日17時 写真のキャプションを修正いたしました。(鉄道チャンネル編集部)