オリンピックスタジアムの表玄関・千駄ヶ谷駅に行きました 最近注目のあの競技にも縁ある駅  発想を飛ばしたらN700Sと189系電車に行き着きました

2020.09.21

左側が新宿方面の新ホーム、右側が従来ホーム。新ホーム供用までは従来ホームから新宿方面の列車に乗降していました。ホームドアも整備されました。

ひょっとしたら今夏、最も注目の鉄道駅だったかもしれません。JR中央線千駄ヶ谷駅。駅前にあるのが東京体育館、その奥に顔をのぞかせるのがオリンピックスタジアム(新国立競技場)です。JR東日本はオリンピック・パラリンピック観戦客にホスピタリティー(もてなし)を示そうと駅改良工事に取り組み、新しい駅舎やホームが完成しています。そして今、別のあることでも注目を集める駅です。それは後段に回すとして、まずは駅レポートをご覧下さい。

オリンピックスタジアムの最寄り駅

新しくなった千駄ヶ谷駅改札。東京体育館、オリンピックスタジアム、新宿御苑と共に神宮球場、秩父宮ラグビー場、日本青年館などが間近です。

駅は信濃町―代々木間。線路は複々線で中央線快速は通過、中央総武線緩行(各停)だけが停車します。駅北側は新宿御苑、南側は東京体育館で、南側に改札があります。新宿御苑側は台地のヘリで、線路(階上)、駅舎(階下)のいずれも地上にあります。JR東日本東京支社は本来の五輪に間に合うよう、2016年から駅改良工事に着手。新駅舎、新ホームが相次いで使用を始めました。駅名の由来は、「太田道灌が巡検の際、馬の背に乗せた稲束が千駄(約150kg)もあったから」と地名辞典にあります。駅東側は谷になっています。

駅改良では、改札口を移設してコンコースを拡張。臨時ホームを撤去して新宿方面専用ホームを新設、従来の1面2線を2面2線に増設しました。2面2線の駅は東京メトロには銀座線日本橋駅、丸ノ内線霞ヶ関駅などがありますが、JR駅では珍しいかも(書いているうちに山手線渋谷駅は2面2線と思い出しました)。新宿方面は線路両側にホームがあり、入線する電車はなぜかジェットコースターのように見えてしまいます。コースターは普通、乗り場と降り場(?)が分かれていますからね。

併せて、多機能トイレやベビー休憩室を新増設。エレベーターは定員11人から24人に大型化しました。五輪をはじめとする大型イベント時、簡易改札機や臨時改札機を仮設するそうです。

コンコースに「王将」

ガラスケースに収められた王将モニュメント。左側には駒の由来のプレート。背景の駅名は達筆ですが「羽生善治書」と読めます。

ここまでは前段。私が千駄ヶ谷駅を取り上げようと思ったのは、3年前まで駅ホームにあった将棋の「王将」モニュメントが8月末、改札内コンコースに再展示されることになったというニュースを知ったからです。モニュメントのある理由は、将棋会館の最寄り駅だから。会館は、千駄ヶ谷駅と東京メトロ副都心線北参道駅の真ん中辺りです。肉体を競うオリンピック・パラリンピック、頭脳を競う将棋、その双方の玄関口が千駄ヶ谷駅という点に奇遇を感じます。

王将モニュメントが設置されたのは国鉄時代の1980年。1面2線のホームで2017年まで行き交う列車を見詰めていました。高さ50cmの石造りで、「王将」の文字は初の5冠独占(名人、十段、王将、王位、棋聖)の故・大山康晴名人が筆を執りました。コンコース展示では、背景を「千駄ヶ谷駅」の文字が彩りますが、こちらは羽生善治九段の書だそうです。

日本将棋連盟によると、駅モニュメントの一角は「将棋コーナー」と呼ぶそう。オープニングの8月21日は将棋連盟の佐藤康光会長、千駄ヶ谷駅の香桜野瑞枝駅長らが出席。〝将棋の駅〟としての再出発を誓いました。

藤井聡太棋聖は乗り鉄!? N700Sと189系電車と

さらに話は続きます。現在、注目の棋士といえば、もちろん藤井聡太棋聖(二冠)ですね。将棋会館のことを調べていたら「藤井棋聖の趣味は鉄道」の情報が多数ヒットしました。鉄道チャンネルに取り上げられたことはないようなので、この機会に情報をまとめてみました。

まず、何歳ぐらいから鉄道好きになったのか。物心つく前のようで、「近所の踏切で抱っこして1時間ぐらい列車を眺めていた」という親族の話もあります。鉄道好きな子どもの定番中の定番、プラレールで遊ぶ写真も見つかりました。藤井棋聖は愛知県瀬戸市出身。最初に見た電車は名古屋鉄道瀬戸線か愛知環状鉄道でしょうか。将棋を覚えたのは5歳ですから、鉄道歴は将棋歴より長いわけです。

その後、鉄道の話が出てくるのは中学入学後。担任の先生は「休み時間は友だちと電車の話ばかりしていた」と思い出を披露します。友達と鉄道の話で盛り上がれても、将棋の話には誰も着いてこれなかったのでしょう。

在学中、「青春18きっぷ」で長野や山梨に出掛けたという思い出話もあります。これらを総合して、「藤井棋聖は乗り鉄」となっています。棋士のトレーニングと関係あるかどうかは別にして、ひょっとしたら無心になれる場として列車内を選ぶのかもしれません。

今夏も、藤井棋聖と鉄道の話題が盛り上がっています。民放のインタビュー番組で鉄道の話になり、アナウンサーから189系特急電車の模型を贈られて歓喜。さらに、乗ってみたい車両として東海道新幹線の最新鋭「N700S」を指名したことで、「好きな鉄道車両は189系とN700S」と形式名が挙がっています。

189系は、かつて国鉄の直流電化線区いたるところ見られた183系特急電車の派生形。北陸新幹線開業まで信越線の難所・碓氷峠を走る列車は補機のEF63を併結し、189系は協調運転に対応していました。

189系は、本サイトでも報じられているように昨年現役を引退。藤井棋聖が乗車する機会はなかったようですが、長く中央線特急「あずさ」に使用されたことで、東京駅乗り入れ時は千駄ヶ谷駅も通過したはず。「ひょっとしたら将棋会館に向かう途中、千駄ヶ谷駅で189系を見たのでは……」と思いを至らせるうち、空想列車は始発の千駄ヶ谷駅に戻ったのでした。

文/写真:上里夏生


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