観光列車「etSETOra」に乗って地酒と瀬戸内グルメを堪能 「せとうち広島DC」を徹底解説!【味体験編】

2020.10.03

せとうち広島DCの陸の目玉「etSETOra」

2020年10月1日(木)、「せとうち広島ディスティネーションキャンペーン」が始まりました。

「ディスティネーションキャンペーン(DC)」とは、JRグループが旅行目的地と共同展開する観光キャンペーンのこと。目的地の方で観光素材を整備し、JRが送客を担う。これを各県・地方で実施しており、今年の10月~12月は「せとうち広島」のターン!というわけですね。テーマは「ミタイケン(未体験)」ですが、「ミ」には「味」や「観」といった意味も込められています。平たく言えば瀬戸内や広島の美味しいもの、美しい景色もしっかり堪能してくださいね、ということです。

鉄道ファン的な目玉は10月3日(木)にデビューする「etSETOra」と先日就航した観光型高速クルーザー「SEA SPICA」でしょうか。前者は昨年引退した「瀬戸内マリンビュー」を改造した列車で、呉線や山陽本線を走る新たな観光列車として、車内で地元のお酒やスイーツを提供します。

2019年12月の「瀬戸内マリンビュー」ラストラン

後者は「WEST EXPRESS 銀河」や「えちごトキめきリゾート雪月花」の川西康之さんがデザインを担当されています。船内にはWE銀河を思わせるデザインが散りばめられており、夢の夜行列車に思いを馳せながら瀬戸内の多島美を満喫するのにぴったりなんですね。

今夏就航したばかりの観光型高速クルーザー「SEA SPICA」

今回はJR西日本のご協力のもと、魅力的な乗りものや地元の方々の「おもてなし」を取材してきました。現地での新型コロナウイルス対策にも触れつつ、二回に分けて旅の注目ポイントを紹介していきます。まず、初回は「etSETOra」と「グルメ」の【味体験編】で行きましょう。

「etSETOra」でスイーツとお酒を

下関総合車両所 広島支所で撮影

最初にご紹介するのはこちら、「瀬戸内マリンビュー」改め「etSETOra」――昨年12月にラストランを終えたのち、下関総合車両所で改造され、全車グリーン車指定席の快速列車として生まれ変わりました。

車いす対応のグリーン車
「etSETOra」の下は「MIYAJIMAGUCHI←HIROSIMA↔ONOMICHI」
キロ47 7002

「瀬戸内マリンビュー」時代の丸窓を残し、ロゴマークもこれを活かしたデザインに。外観は瀬戸内の青や波の白のイメージです。内装も豪華に生まれ変わり、1号車は秋の宮島、2号車は山の新緑を思わせるものになりました。床材も尾道の石畳風のデザイン(2号車)にするなど、沿線エリアのモチーフを積極的に取り込んでいます。

丸窓は健在
1号車座席
2号車内装

改造前にはなかった設備としては、車いす対応のトイレが挙げられます。車内には大きな荷物スペースも設置され、バーカウンターも新設されました。各座席にはコンセントこそついていないものの、USB充電設備が備わっており、令和の観光列車として相応しい設備を備えた列車となりました。

車いす対応のトイレ
座席に設置されたUSB充電ポート

運転日は月・金・土・日・祝日。きっぷの取り方は特殊なものではありません。乗車日1か月前の10:00以降に、全国のJRの主なみどりの窓口・主な旅行会社で予約すればOK。乗車券と普通列車指定席グリーン券を購入すれば、往路は呉線経由で美しい朝の瀬戸内を眺めながら広島→尾道まで行けますし、復路は山陽本線経由で尾道→(広島)→宮島口と緑豊かな山並みに癒されながらゆったりとした列車旅を楽しめます。

etSETOra運行ルート 往路は呉線(海沿い)、復路は山陽線(山沿い) 画像:JR西日本

でも「etSETOra」の良さは景色だけじゃない。

午前便に乗車されるのであれば、乗車日の3日前までにWebサイト「JRおでかけネット」の案内から「日本旅行」のページに飛んでみましょう。「瀬戸の小箱」(和・洋)というスイーツプランを追加で予約できるようになっています。中身は地元有名店の和菓子・洋菓子の詰め合わせ。「etSETOra」に揺られて美しい車窓を堪能しながら、美味しいスイーツや宮島生まれのコーヒーに舌鼓を打つ、そんな楽しい旅が待っています。

瀬戸の小箱(洋)
瀬戸の小箱(和)

お酒が好きな方には午後便がおすすめです。こちらは予約不要で、etSETOraオリジナルカクテル「SETOUCHI BLOSSOM」や「酒どころ広島の地酒のみくらべセット」に、地ビールやウイスキー、ワインなど、広島の多彩なお酒と美味しいおつまみが注文できるようになっています。

1号車バーカウンター

JR西日本の担当者曰く、「etSETOra」のメニューは広島支社が中心になって地元と協力して作り上げたもの。「広島県内の”美味しい”をつまみたい方」には最適なチョイスと言えそうです。

コロナ対策はどうなっているのでしょうか? まず、「etSETOra」は抗菌・抗ウイルス加工済み。車内の各所に消毒用のアルコールも設置しています。座席数も定員40名と「瀬戸内マリンビュー」時代の半分ほどに抑えられており、他者との距離は比較的取りやすそうです。また、車内で提供する”体験”として、元々は「中国醸造」の試飲が組み込まれていましたが、こうした試みを感染症対策を考慮して中止にするなど、乗客の安全を優先してプランが組まれています。

JR西日本の特急車両などに貼られる「抗ウイルス・抗菌処理済」のシールも
バーカウンターの下にさりげなく手洗い場も

「吟醸酒」発祥の地「西条」で街歩き

西条駅周辺はここ数年でガラッと変わりました

日本三大酒どころといえば灘(兵庫)、伏見(京都)、そして西条(広島)――特に西条は「吟醸発祥の地」として知られており、「etSETOra」復路の便に乗って西条駅で降りれば、目の前はもう酒蔵通り。7軒もの酒蔵が立ち並び、歩いて酒蔵巡りを楽しめるほか、お酒の試飲や各酒蔵オリジナルグッズの購入もできるようになっています。

屋台村「酒蔵横丁」も

取材で訪れたのは西条の賀茂鶴酒造(株)。広島県内一の売り上げを誇っており、そのお酒は食中酒に最適ということで、オバマ元大統領と安倍元首相が会食した「すきやばし次郎」でも採用されています。記者の実家(広島)の冷蔵庫にも三原の「醉心」と一緒に賀茂鶴のお酒が常備されていたような覚えがありますね。

賀茂鶴は酒蔵・一号蔵を改装し、見学室直売所として2019年リニューアルオープンした

「賀茂鶴」はもともと倉庫として使用していた酒蔵・一号蔵をリニューアル。2019年に見学室直売所としてオープンしました。大吟醸を作るタンクや全国でも珍しい木のこしきが展示してあり、お酒好きとしてはたまらない施設になっています。新型コロナウイルス対策もばっちり施されており、椅子は間引いて間隔を取り、無料試飲は中止、試飲用のお酒はプラコップで提供するなどして密と接触を避けています。

大吟醸を作るタンクも展示されてフォトスポットになっている
賀茂鶴では今も木製のこしきを使用しているのだとか
コロナ対策として椅子も間引く
現在は感染症対策として仕切りを作ってプラコップで提供中、でもこのグラスでも飲んでみたいね

西条は街歩きスポットとしても注目度の高い場所です。酒銘を背負う12本の「赤レンガえんとつ」やオリジナルのマンホールは比較的わかりやすい西条という町のシンボルですが、他にも高温で焼き上げられた「赤瓦」や酒蔵の軒先に吊るされた「杉玉」、縦横両方の格子が絡み合う「西条格子」などユニークなオブジェが揃っています。各酒蔵が開放した井戸で水を汲めるようになっているのも酒どころならでは。

赤レンガえんとつや当時を思わせる建造物を見て回るだけでも楽しい
各酒蔵にお願いして井戸を開放してもらっているそうだ

広島はやっぱりお好み焼きじゃけぇ

鉄板の温度は180度 高く盛るのが広島のお好み焼きです

「etSETOra」復路に乗るなら宮島口まで行って観光……というのも面白いのですが、広島で降りてちょっと早い晩御飯をいただくのもアリ。平日なら16時10分、休日なら15時36分広島着。駅前を散策したらもういい時間です。広島の名物をいただきましょう。では広島の食と言えば? もちろん、お好み焼きです。

広島には「お好み村」という有名なお好み焼きスポットがあり、広島市内循環バス「めいぷる~ぷ」のグリーンルートで約20分。「ひろでん」の「八丁堀」電停下車徒歩3分で辿り着けますが、今回の取材では広島駅の近くでいただくことになりました。

広島市内循環バス「ひろしま めいぷる~ぷ」 せとうち広島DCに向け「ブルールート」も運行を再開、「SEA SPICA」乗船に最適なタイミングで広島駅を出発する

以前までなら広島駅直結の「ASSE」という駅ビルにお好み焼き屋さんが何店舗も入っており(元広島県民の目で見ても、駅ビルのワンフロアをお好み焼き屋で埋め尽くすのは愛が重過ぎると思うのですが……)、新幹線を降りてすぐお好み焼き屋さんへ直行! という選択肢も取れましたが、残念ながら2020年春に閉館してしまいました。というわけで、今回は駅から徒歩2分の「駅前ひろば」へ向かいます。

駅前ひろば コロナ禍で客足は鈍りましたが、現在も15店舗が営業中です

「駅前ひろば」は広島最大級のお好み焼き施設。現在は15店舗が営業しており、席数は修学旅行生が丸ごと押し寄せてきても対処できるレベル(結果的に密を避けられるというワケ)。今回お訪ねした「ぞぞ」さんでは、ふっくらドーム型の「お好み焼き」に大根おろしを載せ、市場にはあまり出回らないという「結晶ソース」と絡めて提供しています。この「結晶ソース」、牡蠣のエキスや瀬戸内レモンの酸味も加えてさっぱりとした味わいに仕上がっており、評価は結構高めです。広島にお住いの方ならオタフクソースかカープソースを常備しているはずですが、たまには普段使いしないソースを楽しむのも乙なもので、むしろ県民におススメかもしれません。

大根おろしも載せて、結晶ソースをかけ、箸は使わず͡コテでいただきます

もちろんメニューの中には「秘密のケンミンSHOW」で有名になった「ウニホーレン」や呉の名物として有名な三宅水産の「ガンス」もあり、お好み焼き屋さんで食べたいものは一通り揃っていました。

呉の「がんす」 鉄板で軽く焼いてサクサクにしたところでトウガラシなどをかけると最高
ウニホーレン バゲットやラスクに載せていただいても美味しい

さて、腹ごしらえをしたところで「せとうち広島DC」の【味】体験は切り上げることにしましょう。もちろん広島の味と言えば美味しい「牡蠣」、三原のタコ、尾道ラーメンなど挙げればきりがないのですが、まずはリーズナブルで腹いっぱいになれるお好み焼きとスイーツ・地酒で楽しんでいただいて、また来たときにもっとディープなものを頼んでいただければいいんじゃないかな、と広島出身の記者は愚考します。

「味体験」の次は「観体験」ということで、次は「せとうち広島DC」のもう一つの目玉「SEA SPICA」と三原・呉をご紹介します。「舌」の次は「目」で楽しんでみませんか?

次回: 「SEA SPICA」で瀬戸内の島々をめぐる旅 呉では護衛艦も間近で 「せとうち広島DC」を徹底解説!【観体験編】
→https://tetsudo-ch.com/10775333.html

文/写真:一橋正浩


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