窓開け通勤車両の換気量、混雑時でも変わらない? 国交省が鉄道総研の研究結果を公表
国土交通省は10月28日、車内換気に関する鉄道総研の研究を公表しました。
これまでの経験から換気促進には窓の開口が有効であることは判明していましたが、列車走行時の窓開け換気効果に関する定量的な知見は得られていませんでした。そうした背景から、鉄道総研が開発した空気流シミュレーターを用いた定量的な評価が始まり、本年6月にはシミュレーションの結果判明したことが2点公表されています。
・窓の開口面積および列車速度に対して換気量はおおむね比例して増加する
・標準的な通勤型車両が左右3カ所、合計6カ所の窓を10㎝程度開けて速度約70km/hで走行した場合、換気量は0.3~0.4㎥/s、車内の空気がおおむね5~6分に1回入れ替わる
今回はその第2弾として、車内混雑度が換気へ影響を及ぼすかどうか、空調装置を併用したらどうなるかといった点をシミュレーションしています。結果、判明したのは以下の2点です。
・車内混雑度による換気効果への影響については、乗車率が高くなるほど換気回数は多くなり、また換気量はほぼ変わらなかった。
・窓開けに加え、空調装置による強制換気(強制換気量:毎秒0:43㎥)を併用した場合、換気量は毎秒約0.8㎥、車内の空気は概ね2~3分に1回入れ替わることとなった。(空車時)
前者については乗車率0%、50%、100%で比較。乗車率が高くなるほど車内の空気体積が少なくなり、車内の空気が入れ替わる回数は多くなる一方で、換気量にはほとんど差がないことが確認されました。ただし車内の各所における空気の流れについては引き続き詳細な評価を行うようです。
後者については空調装置や送風機による車内の空気循環(強制換気なし)が窓開けによる換気量に影響を及ぼすかどうかを確認。結果、空調による空気循環の有無による換気量への影響には有意な差が見受けられなかったとしています。
以上のことから、車内換気量は「窓開けによる換気量」+「空調装置による強制換気量」の総和で評価できます。標準的な通勤型車両の空調装置による強制換気量は毎秒0.43㎥、窓開けによる換気量を加えて毎秒0.8㎥。これで車内の空気はおおむね2~3分に1回入れ替わります。窓を開けず空調装置による強制換気のみに頼る場合は、おおむね5分で1回のペースとなります。
【鉄道利用者のみなさまへ】
通勤型車両では、窓を10cm程度開けて走行した場合、乗車率が高い時でも、乗車率0%時と換気量はほぼ変わらないと試算されています。(車内の空気は5~6分程度で入れ替わります)
詳しくはこちら↓https://t.co/eLxX3gojC0#新型コロナ #電車 #満員電車 #換気 #車内換気 pic.twitter.com/BcpiOO43Jh— 国土交通省 (@MLIT_JAPAN) October 28, 2020
もちろん条件を変えれば効果も変わってくるのでは(貫通路の有無など)といった懸念はありますが、こうしたシミュレーションにより定量的な知見を蓄積していけば、より効果的な対策が打てるようになっていくことでしょう。
今後は列車の加速減を考慮した換気効果などについて、検討が進められていく予定です。
鉄道チャンネル編集部