「ATSを積むヨ8000もなし。無線もなし。手旗と合図だけで動いてる」

そう機関士から聞いて、ファンも記者も驚く。「マジかよ」「すげえ」と―――。

ここは東武鉄道 蒸気機関車の拠点、南栗橋車両管区。埼玉県久喜市。

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関東最大の路線網をもつ東武鉄道の一大車両基地。その最も西側に蒸気機関車たちの試走ラインや訓練用ホームが。東側には、100系スペーシアから各通勤車両、12系、14系の修繕待ちまで、それはいろいろとまってる。

この南栗橋車両管区内で、2機のC11形蒸気機関車が重連で、SL大樹用14系3両を走らせた。

前機は C11形325号機、後機は C11形207号機。325は最近、真岡鐵道からやってきた釜。後ろの207は、SL大樹で実績を積んできたJR北海道保有機。

この日は、南栗橋車両管区内のSL検修庫付近から、同社教育訓練センター付近の間の800mを、推進運転とけん引で行ったり来たり。

そこでファンや記者たちを驚かせたのは、無線も使わず、2機の機関士たちが体感だけで出力・ブレーキを操っていた点。

「いつもどおり事前の打ち合わせのあと、実際に合図だけで走らせてみた。出発の汽笛をあげたあと、出力を入れていくとき、前(325)と後ろ(207)の息をあわせて、同じように出力を上げていく」

「たとえば、後ろ(207)から当たった感覚があると、前(325)を少し開ける。前が0.3開けたら、こちらは0.1(弁を)開けるとか。前が当たるようだったら後ろ(の弁を)を開けるとか」(機関士)

動画↑↑↑でわかるように、推進運転の出発直前は、207が黒煙を濃い目に吹き上げる。息も荒く、バッバッバッバッバッバッバッとやる気満々のようす。いっぽうの325は、ゆっくりと呼吸し黒煙も控えめに、プシューーープシューーーと呼吸を長めにとって準備する。

出だしすぐに、こんどは325の弁が開く。こうした体調の違いもあるのに、2機は息をぴたりとあわせて走っていく。この息のあった走りに、みんな拍手!

―――そんな東武鉄道のC11 325と207。12月26日からはこの2機体制で、SL大樹 土休日4往復運転に挑む。

ちなみにこの↑↑↑動画。2分24秒付近からと、6分10秒付近からの動画は、3軸ジンバル4Kカメラ「Eセレクト ポジカメ」で撮ってみた映像。それ以外がスマホで撮影した動画。