安全性を向上させ、線路沿いの設備を減らし、踏切制御への初期投資とメンテナンス費を2割減らせ―――そんな目標をかかげた試験走行が八高線 高崎~高麗川 の非電化区間で続いている。

JR東日本は、自社ローカル線むけに、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)と携帯無線通信網(4G LTE)を活用した列車制御システムを開発中。世界初といわれる同システムを八高線の非電化区間で試している。

一般的な列車制御は、地上設備が列車の位置を検知し、列車の速度をコントロールしたり、踏切を操作するなどの一連の制御を行っている。

そこを衛星 GNSS との情報送受と、携帯電話と同じ 4G LTE 無線通信で列車を制御し、初期投資コスト削減や地上設備の大幅スリム化を図るという試み。

現在の踏切制御はケーブル伝送、運転士の目視でブレーキ

この無線式列車制御システム開発のなかで、八高線ではいま踏切制御の試験走行が続く。

現在の踏切制御は、線路側の踏切制御子が列車の往来を検知すると、その先にある踏切までケーブルで踏切制御情報が送られ、踏切の遮断器が降りたり、列車接近警報が始まるという仕組み。

踏切で異常が発生した場合は、踏切手前の線路沿いに置かれた特殊信号発光機が灯り、それを目視確認した運転士がブレーキを入れる。

衛星 GNSS と携帯無線通信網 4G LTE の踏切制御は……

衛星 GNSS と携帯無線通信網 4G LTE の踏切制御は、携帯電話のGPS機能と同じく、まず衛星測位 GNSS で自分の列車位置を検知。

制御情報については、携帯無線通信網 4G LTE で踏切制御情報が送られ、踏切で異常が発生した場合は逆の流れで携帯無線通信網 4G LTE で列車に情報を伝送する。

列車位置は衛星で、制御情報は 4G LTE で、というシンプルな組み合わせに変わる。

八高線でのテスト走行から、列車の速度制御機能のテストへ

こうした衛星 GNSS と携帯電話 4G LTE の組み合わせで、踏切の異常時に列車は自動的にブレーキを入れられて、踏切の安全性が大幅に向上する。

また、通信側に異常が発生した場合は、自動的にブレーキを入れ、踏切も警報を入れたり遮断器を下ろすようにする。

こうした仕組みで無線化することで、従来あった有線ケーブルなどの線路沿いの設備が大幅削減でき、輸送の安定性も向上するとみている。

JR東日本は、こうした無線化を2024年度までに導入すべく、いまもテストを繰り返す。

八高線でのテスト走行はこの1月で終え、自社ローカル線への導入をめざし、こんどは列車の速度制御機能について2021年度から試験していく予定。