2021年3月13日、えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン 糸魚川~梶屋敷間に新駅が開業し、記念式典が行われました。名称は「えちご押上ひすい海岸」で、糸魚川市に新駅が開業するのは35年ぶりのことです。

新駅設置の取り組み自体は、糸魚川高校が現在の平牛地区に移転した昭和47年から進められてきましたが、当時は技術的な事情により断念。北陸新幹線開業に伴うえちごトキめき鉄道の発足により、路線がディーゼル車での運行となることが明らかになり、新駅設置の要望活動が再開。平成26年度から新駅整備可能性などの調査が始まり、令和元年9月に新駅整備が認可され、翌年着工に至りました。

新駅周辺には先に挙げた糸魚川高校だけでなく、新潟県糸魚川地域振興局、糸魚川総合病院といった公共施設や医療施設があり、また宅地開発や商業施設の進出といった市街化が進展する地域でもあることから、通学・通勤・通院などの鉄道利用の利便性が向上し、生活の足としての利用が期待されています。開業記念式典の祝辞において、かつて糸魚川高校に通っていたという中村康司県議は、「糸魚川の駅を降りて糸高へ通うのは本当に不便で、ここに駅があったらなと当時の旧友と話していた。しっかり地元のみなさんでトキ鉄を使って売り上げを上げ、活性化した賑わいのある路線にしていきたい」と語りました。

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えちごトキめき鉄道の鳥塚亮代表取締役社長は、あいさつの中で工事関係者の尽力に触れ、コロナによる部材の流通ストップや冬の大雪の中、開業を間に合わせた工事関係者や同社設備部に感謝を述べるとともに、地域の方々とともにこの駅を育てていきたいと語りました。また、観光資源も近いことから、「ひすい海岸という名前をPRし、鉄道会社から情報発信、観光客を連れてくる」と観光PRにも取り組む姿勢を示しました。

式典終了後、ホーム上で地元高校生から運転士へ花束が贈呈され、出発式や列車見送りが行われました。駅周辺の商業施設では、新駅開業にあわせたプレゼントなども実施しており、地元からの期待の高さが伺えます。

新駅は2面2線の相対式ホーム(千鳥式)で、有効長は45メートル、ホームの高さは1.1メートル、ホーム幅員は2.5メートル。旅客用のスロープや床面積15.85平方メートルの待合室を備えます。踏切安全設備は三次元レザーレーダー式障害物検知装置。

また糸魚川市が事業主体として駅周辺の施設整備を行っており、床面積16.70平方メートルの公衆トイレや、駐車場(14台)、駐輪場(140台ほど)、周辺案内看板も設置されています。

待合室はかつて漁師の町であったことから船小屋をイメージする作りになっており、内装には糸魚川産の木材を使用。木の温かみを感じられる空間になっています。

文/写真:一橋正浩