トヨタのアプリでJR九州と西鉄が協業 背景を運輸総研のセミナーから読み解く【コラム】

2021.05.29

西鉄は鉄道のほか、バス事業でも全国トップクラスを行く交通事業者です。鉄道の基幹路線は西鉄福岡(天神)―大牟田間の天神大牟田線。写真は2007年にデビューした3000形電車(ゴスペル / PIXTA)

鉄道業界では、相変わらず交通の総合情報基盤・MaaSに関するニュースが飛び交います。多くは、「鉄道事業者がMaaSで乗り継ぎや最終目的地までのアクセスを改善して、利用促進を図る」に類する中身ですが、鉄道MaaSには、もう少し別な見方もできそうです。それは、MaaSを仲立ちとした複数事業者の協業です。

競争から協調へという新しい流れを意識したのは、運輸総合研究所が2021年3月に福岡市で開催した運輸政策セミナーの情報を知ったから。九州エリアでは2019年秋から、JR九州、西日本鉄道の鉄道2社と、トヨタ自動車がタッグを組んで移動サービスを向上させ、公共交通の利便性向上に成果を挙げるそうです。ここではセミナーの資料を基に、3社の役割分担や実際のサービス向上策を紹介。さらに関連する話題として、JR東日本と私鉄のMaaS連携2題を取り上げました。

セミナーはオンライン会議システムで開催され、JR九州、西鉄、トヨタの部課長クラスが参加。東京大学公共政策大学院の長谷知治特任教授がコメンテーターを務めました。(画像:運輸総合研究所)

トヨタのアプリにJR九州と西鉄が乗る

出発地、経由地、目的地と利用交通手段を入力すると出発時刻などが表示されるMaaSアプリ「my route」イメージ(画像:運輸総合研究所(トヨタ自動車提供))

JR九州、西鉄、トヨタのMaaS協業は、トヨタの「my route(マイルート)」というMaaSアプリに鉄道2社が情報提供して、鉄道とバスのルート検索や、列車予約できるようにしたサービス向上策です。交通分野では、とかく〝鉄道vs自動車〟のステレオタイプな見方をされがちですが、なぜトヨタのアプリで列車やバスなのか。その点から解き明かしましょう。

トヨタは、2014年に策定した経営理念で、「もっと移動したくなる環境づくりを通じて、すべての人の移動の自由と、ずっと賑わう街づくりに貢献する(大意)」を打ち出しました。人は何か目的があって初めて出掛けるわけで、移動したくなる街づくりを進めれば、自動車にも鉄道にもプラスになります。

MaaSアプリのmy routeは、2018年から福岡市で実証実験。1年後の2019年秋からは、福岡、北九州の福岡県2市でサービスを開始しました。my routeで提供するのは、①ルート検索、②予約・決済(支払い)、③イベント・スポット情報――という定番の3機能。自動車メーカーのルート検索は、通常は道路や駐車場を知らせるカーナビですが、トヨタは列車やバスも含めて情報提供します。自動車メーカーらしいのは、カーシェア(レンタカー)営業所の案内でしょうか。

my routeの公共交通系のサービスでは、JR九州の列車がインターネット予約できるほか、訪日外国人専用1日フリー乗車券をネット販売します。西鉄では、「バス・鉄道フリー乗車券」をネット販売、鉄道やバスのリアルタイムの運行情報がチェックできます。とはいうものの、トヨタが鉄道のきっぷを直接売るわけでなく、トヨタのアプリからJRや西鉄のサイトに飛べるようにしているのです。

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