Izukoで東急、JR東日本、伊豆急が連携

東急、JR東日本、伊豆急が協業する観光型MaaS「Izuko」による地域振興イメージ(画像:東急)

ここからは福岡エリアと同じく、MaaSを介した鉄道事業者の連携2題を取り上げます。東急、JR東日本、伊豆急行の3社は2020年11月から2021年3月まで、静岡県伊豆エリアを対象に、3段階に分けて観光型MaaS「Izuko(イズコ)」の実証実験を実施しました。Izukoは、オンデマンド交通など、さまざまな公共交通機関や観光施設、観光体験をスマートフォンで検索・予約・決済できるサービスです。

機能面では、前回のフェーズ2で当日購入としていたチケット類について、事前購入機能を追加。さらに、Izukoで観光情報や交通チケットが提案できるようにし、レンタカー割引などの特典も用意しました。感染拡大防止の3密回避では、駅・観光施設の混雑情報を配信。昼はレジャー、夜は仕事のワーケーション施設と連携して、商品割引に使えるクーポンコードを提供しました。

伊豆半島は伊豆急のテリトリーで、首都圏から旅行する場合、東京から伊豆へはJR東日本、現地では東急グループの伊豆急が役割分担します。Izukoは、3社が東京から伊豆への移動と、現地でのアクセスを分け合ったMaaS協業のモデルといえるでしょう。

京阪HDは京都観光でJR東日本のMaaSアプリに乗る

ADVERTISEMENT

JR東日本のもう一つのMaaS連携は、京阪ホールディングス(HD)と共同で実施した「奥京都MaaS」の実証実験です。国土交通省の「MaaSによる地域課題解決の推進・支援事業」に応募して採択。実験期間は、2020年10月から2021年1月まで。鉄道2社に京都市観光協会などが加わり、検索・手配・決済の機能を一元的に提供するJR東日本の「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」をベースに、MaaSサービスを構築しました。

JR九州と西鉄、さらにはJR東日本の2件の協業例で見るように、MaaSはライバルの鉄道事業者や鉄道以外の事業者との連携を可能にします。別のコラムにも書いたように、MaaSは新たな移動需要を創出する手段でないため、過剰な期待は禁物でしょうが、MaaSアプリを活用すれば、より柔軟な連携が可能になることは認識していいでしょう。

文:上里夏生