トヨタのアプリでJR九州と西鉄が協業 背景を運輸総研のセミナーから読み解く【コラム】

2021.05.29

「移動の自由のない地域は衰退する」

「移動のすべてを一つに!」を目指すJR九州のMaaSサービスイメージ(画像:運輸総合研究所(JR九州提供))

JR九州や西鉄は、ライバルとの連携をどう考えるのでしょうか。JR九州の資料に、ヒントになりそうな九州の交通環境が紹介されています。主な指標は「高齢化率28.5%」「買い物困難者99万4000人」「免許返納者数2万8300人」「赤字のバス会社90.9%」など。地域の高齢化が進んで、地域公共交通の経営環境は急速に悪化しています。

JR九州は、多彩なD&S(デザイン&ストーリー)列車で観光列車ブームを巻き起こし、国内外から人を呼び込んで、経営を成り立たせてきました。しかし今、コロナでそうしたビジネスモデルはいったん休止を余儀なくされ、地域をもう一度見直す必要に迫られています。そのことも、西鉄との関係を構築するきっかけになったはずです。

かつてライバルだった西鉄との協業に当たり、JR九州が再認識したのが「移動の自由がない地域は衰退する。九州から離れられないJR九州にとって、住み続けられる地域の維持は、地域交通を受け持つ企業の責務として、きわめて重要な命題(大意)」の大前提。そして、協業の手段がMaaSだったわけです。

JR九州と西鉄は2019年11月、MaaS連携を発表しました。JR九州はMaaSサービス開始で見えてきたこととして、「自動運転モビリティやオンデマンド交通の重要性」「シームレスな交通ネットワークを実現するための課題解決」「MaaSアプリプラットフォームの必要性」などを挙げています。

「世界的自動車メーカーからの連携打診に驚きと関心」

MaaSによる連携を発表するトヨタ自動車、JR九州、西鉄の3社代表(画像:運輸総合研究所(JR九州提供))

JR九州と西鉄の協業は、間にトヨタのMaaSアプリが入って初めて実現できたわけですが、鉄道2社は自動車メーカーとの連携をどうとらえたのでしょうか。西鉄の資料には、「世界的な自動車メーカーからの連携打診に驚きと関心」の一文があります。

西鉄はトヨタからの申し出を受け、「地域の公共交通を維持するため、鉄道やバスの公共交通と、他のモビリティ(カーシェア、サイクルシェアなど)との連携推進の必要性」を再認識したそうです。西鉄の資料に、「西鉄は、福岡から逃げ出すことはできない。福岡を移動しやすい、魅力ある街にすることで、地域とともに発展する」のフレーズがありました。

JR九州は「九州から離れられない」、西鉄は「福岡から逃げ出すことはできない」。会社は違っていても、同じ鉄道事業者、考えることは一緒だったわけです。

JR九州の列車から西鉄バスへの乗り継ぎをスムーズに

JR九州と西鉄の協業は、ダイヤ改正を機に北九州市の日豊線下曽根駅で、列車からバスへの乗り継ぎをスムーズにするといった形で表れています。トヨタは、「九州の地方都市から福岡市に出掛ける場合、自宅から最寄り駅にカーシェア車で移動した後、列車で博多へ、さらに西鉄バスで福岡市内の目的地へ」といった、MaaSを介したスムーズな移動サービスを考えています。

トヨタを含む3社は、将来的なカーシェア車の自動運転、ビッグデータを活用した移動のさらなる利便性向上などを、今後の検討事項としています。

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