2021年3月のダイヤ改正でデビューした新型車両E131系(写真:鉄道チャンネル編集部)

ゴールデンウィークは政府の呼び掛けに応じてステイホームで過ごしましたが、家でテレビやインターネットを見るだけでは、読者諸兄のメガネにかなう話題は見付かりません。連休明けを待って三密を避ける〝スモールツーリズム〟を実践、千葉県の房総半島を、列車でぐるり一周しました。もちろんマスク2枚を着用し、駅に降りるたびに手洗いを繰り返しながら……。

房総を目的地に選んだのは、訪れてみたい駅があったから。鴨川市のJR内房線江見駅。1日平均乗車人員80人(2018年度)の小駅ながら、JR東日本が目指す「駅の地域拠点化」のモデル駅として、2020年夏以降、駅と郵便局を一体化した「江見駅郵便局の開局」、農産品を集荷する「JRE農業ステーションの開設」と話題が続きます。JR千葉支社管内に今春から投入された、E131系電車に乗車する目的も合わせ、初夏の1日を「房総鉄道三昧」で過ごしました。

無人駅から有人駅に

江見駅から徒歩5分ほどの江見海岸。JR東日本千葉支社は両国駅発着で、安房鴨川を結ぶサイクルトレイン「B.B.BASE」を運転します。

線区は内房線ですが、駅から300mほど先に広がるのは紛れもない外房の海。蘇我ー安房鴨川間を結ぶ内房線で、終点の安房鴨川から2駅手前、江見駅の駅前に商店はなく住宅が建ち並びます。線路は単線で、駅は上下線の列車がすれ違えるよう、2面2線の構造になっています。

駅舎を兼ねる郵便局舎は新しく建てられました。出入り口の上部に「JR」と「JP」のマークが並びます。

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江見は2020年夏まで無人駅でしたが、現在は係員が普通乗車券や定期券類、無記名Suicaを発売・精算、列車や運賃の案内に当たります。SuicaへのチャージもOK。とはいえ業務に当たるのは、JRでなく日本郵便の社員。簡単に言えば、JR東日本から委託を受けた郵便局員が、駅業務を受け持ちます。

一番左側がJR窓口、他の3カ所が郵便局窓口。ちなみに、局舎内はお客さんが写らなければ撮影OKとのことでした。
駅舎の一角にはキヨスクの物販コーナー(左)。セルフレジでSuicaなどのICカード乗車券が利用できます。右は鉄道ファンサイトでも話題になったポスト。かつて房総の地を走った郵便荷物車・クモユニ74を模したデザインです。

JR東日本と日本郵便は2018年6月、「地域・社会の活性化に関する協定」を締結しました。江見駅で駅業務と郵便局窓口の一体化は、協定に基づく実効策です。

人・モノ・情報の交流促進で地域に貢献

当時の資料を読み返したら、「JR東日本と日本郵便は双方の強みである、それぞれのネットワークを生かし、人・モノ・情報の活発な交流を促進。協定締結を機に、地域・社会の活性化にいっそう貢献します(大意)」のフレーズが目に止まりました。連携内容は、「郵便局と駅の機能連携」「両社のネットワークなどを活用した物流」「観光振興などの地域活性化」「その他、地域・社会の活性化に資すること」の4項目です。

考えてみれば、地方部にネットワークを持つのが両社の共通点。鉄道は人、郵便は情報を届けます。地方部の鉄道駅は無人化が進みますが、仮に地方部でも有人サービスが必要な郵便局に駅業務を委託すれば、鉄道にも郵便にも、さらには利用客にもプラスになります。3者が文字通りWinWinWinの関係になれるのが、駅と郵便局の一体化です。

両社の連携は、2018年7月に発表されたJR東日本のグループ経営ビジョン「変革2027」にも、「地域を豊かにする駅の地域拠点化」として盛り込まれました。駅と郵便局や地産品の販売・集配所などを一体化して、地域の賑わいを創出する。それが、JR東日本が目指す「駅の地域拠点化」です。