ヨーロッパやアジアから専門家が参集

那覇市北部の住宅街。本土と違い、高層マンションはほとんど見掛けません。丘陵の向こう側が宜野湾、沖縄の両市です。

会議にはスイス、フランス、ドイツ、韓国などから来日した専門家と、日本の研究者、鉄軌道事業者、それに地元・沖縄の行政、一般市民をはじめとする約200人が参加。地域公共交通の在り方をめぐり議論を交わしました。主催は交通安全環境研究所(交通研)と鉄道総研で、国土交通省と環境省、沖縄県、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが後援しました。

話に入る前に、なぜ沖縄でLRTの国際会議なのか? 本稿をご覧の皆さんに、「LRTとは何か?」の説明は不要でしょう。建設が進む芳賀・宇都宮LRT、最近も「車両愛称と停留所名が決まる、長い電停名が並ぶ」のニュースがサイトに掲載されました。

でも、そうした情報に目が行くのは鉄道に関心があるから。鉄軌道はゆいレールだけという沖縄県民の皆さんには、ひょっとしたら「鉄軌道で移動」の発想が抜け落ちているかもしれません。ましてや10年前には、LRTの言葉そのものを知る方はほぼ皆無でした。そこで、一般市民や行政関係者への啓発効果を狙いに、沖縄ワークショップが開催されました。

ライトレールはライフレール

両側に土産物店が並ぶ那覇のメインストリート・国際通り。ここにLRTを走らせる構想もありますが、片側1車線でスペース的に厳しそうです。

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会期は全体で3日間。初日は那覇市内で、地元のエッセイストでLRTに詳しい、ゆたかはじめさん(ペンネーム)や国交省鉄道局の担当者が市民向けに講演。2日目から宜野湾市の沖縄コンベンションセンターに会場を移し、海外の専門家による招待講演に続き、交通研、鉄道総研の研究員や事業者などが発表。最終日は全員参加の総合討論というプログラムが組まれました。私は2、3日目を取材しました(以下、役職などは2010年当時のものです)。

招待講演では、スイスに本社を置く都市計画・鉄道輸送コンサルタント企業のイーメック・アンド・バーガーのフェリックス・ラウベ社長が「ライトレールはライフレール(生活鉄道)だ」と提唱して注目を集めました。

ラウベ社長は、ヨーロッパに相次いで導入されてきたLRTが、行政の押し付けでなく、市民の意思で採用されてきたことを紹介。「スイスは、自動車の走るエリアと人のためのエリアを明確に区分する街づくりを進めた結果、ヨーロッパで初めて自動車利用がマイナスに転じた。LRTが導入された街は、高度な都市機能を持つようになり、中心市街地と郊外のバランスが取れるようになった」と成果を強調しました。