那覇LRTのルーツはここにあり 2010年11月に沖縄で開かれた「LRTワークショップ2010」【取材ノートから No5】

2021.06.05

鉄軌道による公共交通の導入可能性

那覇市役所前のスクランブル交差点。現在も人口が増加傾向をたどる那覇は、国際観光振興と交通問題を関連付けて考える動きが活発です。

2020年版「那覇市地域公共交通網形成計画」に盛り込まれた、LRT整備構想は次章に回し、前段として沖縄県の都市計画で初めて鉄軌道による公共交通の導入可能性を指摘した、沖縄県の「交通システム可能性調査」を披露します。調査結果は2010年3月に公表。アメリカ軍・普天間基地(普天間飛行場)の返還問題と、沖縄の鉄道やLRT整備を関連付けました。

普天間基地があるのは那覇市の北側に隣接する宜野湾市。基地は周辺の関連施設も含めると1000~1500ヘクタールの広大な広さで、沖縄本島で人口や産業が集中する中南部地域を南北に二分します。県は基地が日本側に返還された場合、南側の那覇市と北側の沖縄市に分断される都市機能を一体化し、那覇、普天間(宜野湾)、沖縄(市)の3極構造の都市を形成する考えで、マイカーに依存し過ぎる交通政策を見直す視点も含め、那覇、沖縄の両市を結ぶ鉄軌道の整備手法やルート、効果などを試算しました。

県が、鉄道やLRTやモノレールの導入を考察したのは那覇市―沖縄市間の約25キロで、LRTに関しては市内中心部で道路上、郊外で専用軌道を走る鉄道に近いタイプのほか、全区間で併用軌道を走る路面電車タイプも含め比較しました。

代表例として鉄道とLRT(専用軌道タイプ)を紹介すれば、いずれも線路は全線複線で高架上または地下を走る鉄道は最高時速130キロ、LRTは踏切のない高速運転区間は時速100キロ、それ以外は40キロで運転します。整備費用はあくまで概算ですが、車両費を含め鉄道が4023億円、LRTが1940億円(那覇市―沖縄市間)になりました。

その後、那覇―沖縄市間のLRTに目立った動きはありませんが、現在も「将来の沖縄には、LRTをはじめとする何らかの鉄軌道系公共交通機関が必要」という論調は生きているようです。

公共交通網形成計画にはLRTが2案

那覇市の地域公共交通網形成計画には、「LRTなどの基幹的公共交通」が赤の点線で表記されます。(画像:那覇市)

最終章は、2020年に策定された那覇市の都市計画「地域公共交通網形成計画」に盛り込まれたLRT構想を駆け足で。「目指すべき将来公共交通ネットワーク」では、LRTは2路線のネットワークが示されました。路線は東西方向と南北方向で、市内中心部の真和志地区でクロスします。現在の那覇市の鉄軌道系交通機関は、ゆいレールによる南北方向しかなく、形成計画は「LRTなどを導入し、東西方向の交通軸を形成することで、都市のシンボル軸との連携、市域外との連携軸の形成が図られる」とします。

都市計画にLRTが盛り込まれたといっても、直ちに実現するものでないことは、本稿をご覧の読者諸兄は十分にご存じでしょう。私がLRT実現に最も必要と思うものを挙げれば、それは一般市民の皆さんが「これからの那覇にLRTが必要」と思う熱意です。これからも〝那覇LRT〟に注目したいと思います。

文/写真:上里夏生


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