那覇LRTのルーツはここにあり 2010年11月に沖縄で開かれた「LRTワークショップ2010」【取材ノートから No5】
交通政策と街づくりを車の両輪に
国内有識者では、名古屋大学大学院環境学研究科の加藤博和准教授(現在は教授)が「人口減少が進む今後の社会では、公共交通より自動車(マイカー)の方が環境負荷を抑えられる可能性もある。街づくりと交通政策を連携して進めないと、LRTで二酸化炭素を減らすという理想は幻想に終わりかねない」と、LRTの会議としては思い切った発言をしました。
さらに「LRTの利用を増やすには、マイカーを日常的に利用する一般市民が、『次はLRTに乗ってみたい』と考える魅力を打ち出すことが必要。あわせて、ダイヤやサービス面でバスやマイカーといった他交通機関との連携を図り、何より『地域にLRTが走っている』という存在感を打ち出すことが重要」と提起しました。
加藤教授は現在も交通政策や街づくりの論客として活躍中ですが、「いくらいいものを造っても、利用されなければ意味がない」の論旨には、さすがとうなずかされます。
沖縄県民一人ひとりの問題として交通を考えてもらうこと
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地元有識者では、沖縄へのLRT導入構想を具体的なルートを含めて提唱した琉球大学工学部の堤純一郎教授が地域交通の課題を披露しました。
「日本の平均的都市では、二酸化炭素排出源の2割程度が交通分野だが、沖縄県の場合は28%で、交通の環境対策を急ぐ必要がある。長く鉄軌道輸送のなかった沖縄は、県民に公共交通を利用する発想がない。地域への鉄軌道導入の前提となるのは、県民一人ひとりの問題として交通を考えてもらうことだ」と述べました。